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第二章・ペーリュ視点
2-33・リーファにとっての
しおりを挟む残ったのは、心配そうにリーファをうかがうラーヴィと私、そして意識がないままのリーファだけ。
「曽祖父様への連絡は」
「すでに」
そちらを見ずに部屋に同席したままの侍従へと確認すると、気を利かせた誰かが済ませた後だと答えが返った。
ならばおそらく曽祖父は、ほどなくして現れるだろうと思う。
あの方はリーファを大変にかわいがっておられるのだから、余程の状況でもない限り、何を置いても駆けつけて下さるはずだ。
おそらく今、リーファが目覚めた時に、私もラーヴィも、傍にいるのは好ましくない可能性が高かった。
記憶と認識に齟齬があるというのは、想像する限り非常に厄介な状況だと言えた。
その上、齟齬が生じているのはどうやらラーヴィと私のようなのだ。
ラーヴィを義兄上、私をペーリュ義兄上と呼んだリーファ。
他の、例えばそもそもの認識として差がない者達であったりしたならば、それほどの混乱など、きたさなかったことだろう。だが、リーファの中で私とラーヴィは重なることがないのは、ほとんど全く予想出来すぎることだった。
リーファにとって『義兄上』という存在は特別だ。
私がそう育てた。狭い囲いの中へとリーファを囲って、だけど私なりに精一杯、慈しんできたのである。
そうすると必然、リーファの中で『義兄上』という存在が他とは明確に違うものとなるのは、当たり前の話と言えた。
リーファが苦しい時に縋るのは私だ。
逆に、何かいいことがあって、共に喜んで欲しいと強請る先も私。
おまけに今、リーファは身ごもっていて、リーファの了承を得た上でリーファに魔力を注いでいるのは私。
リーファには私以外の魔力など、一筋たりとも流させたことはない。
反してラーヴィとの関りは薄く、義兄弟という認識そのものが薄い可能性が非常に高かった。
そんなラーヴィと私の認識が、リーファの中で入れ替わっている。にも拘らず、記憶はそのままなのだという。
混乱しないはずがなかった。
リーファが頼りたいと、縋りたいと認識している相手と、自分の記憶の中で過去の自分自身がそうしていた相手が違うのだ。
それは当然、とんでもない違和感をリーファへともたらしたことだろう。
気を失う前のリーファの混乱も充分に理解できるものだった。
それと同時に堪えがたい状況でもある。
リーファが、意識を失くす直前。私へと向けた眼差しを思い出す。浮かんでいたのは恐怖と嫌悪。それはきっと、記憶がそのままであるが故に。
何故ならばリーファはずっと言っていたのだから。
『義兄上なら嬉しいです。他は想像したくもない』
と、そう。
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