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第二章・ペーリュ視点
2-23・実弟
しおりを挟むリーファの書類上の両親は私の父母となる。
だから今の所、戸籍上リーファは私の義弟だった。もうじき、というよりは子供が生まれる前に伴侶とする予定ではあるが、その為に必要なのは、両親の了承だ。
おそらく、反対されることはないだろう。
問題があるとすれば、弟妹達だろうか。
彼らも私と同じようにリーファの義兄弟となる。リーファよりは年上の弟妹達。増えたというのは聞いていないので、増えてはいないはずだ。
私は両親をはじめ、他の弟妹達とリーファとのかかわりを、最低限となるよう心がけてきた。
何故か。私の弟妹達なのだ。彼らがリーファへと執着心を持つだろうことなんて、わかりきっていたからだった。
すでに伴侶を見つけ、今はそちらと仲良く過ごしている者はいい。問題は……――。
「兄上。お久しぶりですね」
こうして突然に姿を現す、私のすぐ下の弟、クラシュヴィセ。ラーヴィだ。
「ラーヴィ。来ていたのか」
「今着いた所です。リーファは?」
「ラーヴィ……」
私はラーヴィの姿を見るなり、明確に眉を寄せてしまった。
出来れば見たくない顔だったからだ。
なにせ、今すぐに名前を出したのでわかるとおり、リーファへの執着があからさまなのである。
私より4つ下なので、もう39になるのだが、当然のように伴侶も恋人も作ったことがない。否、恋人に関しては私が把握していないだけかもしれないけれども。
「何度も言っているが用もなくリーファに会おうとするんじゃない」
「用ならありますよ! 魔術師塔からの言付けをもらってきています。リーファは長く休んだままですからね。あちらにはあちらで伝達事項等があるんです。と、言うか、それがなくたって、どうして義弟に会いに来るのに、兄上に咎められなければならないんです? 僕も兄上と同じようにリーファとは義兄弟ですよ」
にこりと機嫌よくそんなことを言われて、どうして私が快く、リーファに合わせられるというのだろう。
ラーヴィは魔術師塔に所属している。当然、リーファを意識してのことだった。勿論、初めからではない。ラーヴィが魔術師塔に一番最初に所属したのはリーファが4つの時だったのだから。
ただ、その後一度退いた魔術師塔に、また所属し直したのは、リーファの所属が決まってからで。そんなもの、誰の目にも理由などあからさま過ぎるというものだっただろう。
また、厄介なことに私の実弟であるだけあって、それなりに優秀で、リーファもリーファで義兄弟相手だ。警戒心など抱こうはずがなかった。
再度深く溜め息を吐く私に、ラーヴィはにこと機嫌よく笑うばかり。
そして、私には。
「義兄上、失礼します」
ラーヴィに苦言は呈せても、こうして私を訪ねてくるリーファを、避けることなど出来るはずがないのである。
鬱陶しいことに、リーファの声を聞いた途端、ラーヴィの顔がぱぁっと花開くように輝いたのだった。
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