【完結】身に覚えがないのに身ごもりました。この子の父親は誰ですか?

愛早さくら

文字の大きさ
上 下
91 / 148
第二章・ペーリュ視点

2-4・希う

しおりを挟む

「下さいっ」

 気付けば私はそんなことを口にしていた。

「ペーリュ?」

 そもそも、涙をこぼした私に驚いていたの人が、訝しげに私の名を呼ぶ。
 それに応えるのでもなく私は再度繰り返した。

「この子を下さい。私にっ……! この子です。私の唯一。私の全て……だから、私に、この子をっ……!」

 自分で自分が何を言っているのか、半ばわからなくなりながらも懇願する。
 それは衝動だった。
 手に入れなければ。今すぐにでも、この子を。私の手に。私のものに。
 私の魔力を注いで、慈しんで、育てて、やがて大きくなったらこの子と子を成すのだ。私の伴侶はこの子しかいない。私の唯一。
 どこか必死な私の様子に、どんどん険しい顔になっていくかの人のことになど気付かずに、私はただ、頼み込む。

「ティアリィ様っ! お願いします、どうかこの子を、私にっ……!」

 の方の名を呼んでこいねがった。

「ペーリュ」
「この子なんです! この子だけだっ!」
「ペーリュ」
「私のっ! だからこの子をっ! 大切にしますっ! 愛してる、だからこの子をっ……!」
「ペーリュっ!!」

 ついにきつく名を呼ばれて言葉を止めた。改めて目にしたの方は、大変に険しい表情で私を睨みつけていて、これまでの方から、そんな眼差しで見られたことのなかった私はおののく。

「あっ……私は……でも、」

 狼狽うろたえる私に、ややあっての方は溜め息を吐いて、

「わかったから、少し落ち着け。冷静になった方がいい」

 窘められて、しぶしぶ何とか頷いた。
 だけど、ともすれば視線が、気付くとの方の腕の中、無邪気な様子で微かな声を上げている愛しい子供へと吸い寄せられる。
 なんて美しいんだろう。なんて可愛らしくて愛しい。私の唯一だ。この子以外にはいない。
 見れば見るほどそんな思いが強くなって、ともすればまた、同じよう、なりふり構わず懇願してしまいそうだった。
 だって欲しい。
 どうしてこの子は、今、私の腕の中にいないのか。どうしての方の腕の中にあるのか。
 同時にどこかでわかってはいた。まだ赤ん坊なのだ。生まれて数日。然程も経っていない。そりゃ、母親の腕の中にあることだろう。私には触れられない。
 だけど堪えられない。
 囲わなければと思った。私の腕の中で囲って、慈しんで、そして……――愛を注ぐのだ。
 幼く、美しく、愛しい私の唯一に。私は、愛を注ぎたくてたまらないのだ。
 知らぬ間に、股間は熱を持っていた。それはとりもなおさず愛を注ぐのに。一番適した行為に、直結する部分だったからなのだろう。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

博愛主義の成れの果て

135
BL
子宮持ちで子供が産める侯爵家嫡男の俺の婚約者は、博愛主義者だ。 俺と同じように子宮持ちの令息にだって優しくしてしまう男。 そんな婚約を白紙にしたところ、元婚約者がおかしくなりはじめた……。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!

みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。 そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。 初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが…… 架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! リクエストの更新が終わったら、舞踏会編をはじめる予定ですー!

【完】僕の弟と僕の護衛騎士は、赤い糸で繋がっている

たまとら
BL
赤い糸が見えるキリルは、自分には糸が無いのでやさぐれ気味です

処理中です...