81 / 148
幕間
x2-6・兄の葛藤⑥
しおりを挟むそしてペーリュは、そんなリーファを包み込み、甘やかすばかりだったのである。
だからアーディはてっきり、ペーリュはリーファの成長を、大切に見守って、待っているのだろうとばかり思っていた。
それがまさか全く待たずに、すでに早々と手を出していただなんて思いもしない。
聞けば引き取ってすぐの頃から、ペーリュはリーファに触れていたのだという。
寝ているリーファの全身に魔力を乗せた手で触れて、剰え体液を擦り込み、数年の内にはついに直接、腹を穿つまでになっていたのだと。それを知った時アーディは気が遠くなりかけた。
なんてことをしているのかと叱り飛ばした。
そう、あの日はたまたま、リーファが珍しく魔術師塔にも出勤せず部屋で休んでいると聞いて、様子を窺いに行ったのだ。
リーファを一目見て、アーディは固まった。
何故ならリーファの下腹部には、すでに育ち始めた子供が成っていたのだから。
それは非常に奇妙なことだった。
何故なら、リーファはいつもと変わらず、他者の魔力を受け入れた痕跡が感じられず、その時のアーディには、リーファ自身の魔力しか、リーファの体内には存在していないように見えていた。
まさかペーリュがリーファの幼い頃から魔力を擦り込み続けていて、もやはすでにペーリュの魔力がリーファに満ちている状態こそが通常となっているだなんて思いもしない。
リーファはリーファで、子供が出来たことそのものは喜んでいる様子で、しかし相手はわからないという。
要領を得ない話を捲くし立てようとしたリーファを遮って、アーディが質問する形で、事情を探っていったのは、アーディ自身が混乱していて、自分でも状況を整理したかったからだった。
そこで分かったのは、リーファには誰かとそう言った行為に及んだ記憶がないこと。そして、それとは別にすでにペーリュから、子供を育てる為の魔力を注いでもらった事実があるということ。
つまり、ペーリュから魔力を注がれた状態が、そのまま、いつも通りのリーファだということで。
そこから導き出された答えに、アーディは天を仰ぎたくなった。
ついでにリーファをペーリュに託したことを、心の底から後悔した。
なにせ、どのような状況で、なのかはその時にはわからなかったけれど、リーファの意識の外で、ペーリュがリーファに触れていたのだろうことは明白で、それがいつも通りにしか見えないということは、もうずっと以前から、そういった行為を繰り返していたということだったのだから。
リーファは全く何もわかっていないように見えた。
幸いなのは、子供を身ごもったことそのものについては、すでに受け入れていて、喜びさえ見せていたこと。今後、ペーリュがリーファへと魔力を注いでいく、それに対しても、むしろ嬉しそうにしていたこと。
ならばリーファはおそらく大丈夫なのだろうとは思った。そうは思ったけれども、とんでもないことをしでかしていたペーリュについては話が別だ。
アーディはなぜかその日に限って、自分について来ていたヴィーフェにリーファを託して、ペーリュを問い詰めに行ったのだった。
10
お気に入りに追加
1,571
あなたにおすすめの小説

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている
飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話
アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。
無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。
ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。
朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。
連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。
※6/20追記。
少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。
今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。
1話目はちょっと暗めですが………。
宜しかったらお付き合い下さいませ。
多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。
ストックが切れるまで、毎日更新予定です。
大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!
みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。
そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。
初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが……
架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
リクエストの更新が終わったら、舞踏会編をはじめる予定ですー!
博愛主義の成れの果て
135
BL
子宮持ちで子供が産める侯爵家嫡男の俺の婚約者は、博愛主義者だ。
俺と同じように子宮持ちの令息にだって優しくしてしまう男。
そんな婚約を白紙にしたところ、元婚約者がおかしくなりはじめた……。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる