67 / 148
第一章・リーファ視点
1-66・本当のお話④
しおりを挟む公女様はこれまでのとても嫌な印象を受けるお顔とは違う表情で僕を見た。
あのお顔はいったいどういう気持ちでそうなっているお顔なのだろうか。
「へ、陛下は、つまり、眠っているその子供に、その、」
「ああ、そうだ。魔力を注いだ。リーファは小さい時から心配になるぐらい、一度眠ったらなかなか起きなくてね。ん? いや、はじめは、よく眠れるようにと暗示をかけたのだったような気がするが……どうだったかな。とにかく、起こすのにはコツがいるんだ。逆に言うと、そうでなければ何をしても起きなくてね。私としても眠りを妨げたいわけではないからいいんだけれど」
知らなかった。
毎朝、特に問題なく起きれているから、僕は自分がそれほどまでにいつも眠りが深いのだということに今の今まで全く気付いていなかった。
勿論、義兄上のお言葉を疑う理由なんてない。
やっぱり僕には自覚も心当たりもないけれど、毎晩一緒に眠っている義兄上がそう言うのだからそうなのだろう。
「そ、それはいつから……あ! こ、子供に魔、魔力を注いで差し上げる為なのですよね? い、今その子供は身ごもっているから……」
公女様が思わずと言った風に問いを重ねられる。
もし、そうであるならば理解できなくもないと言っているようにも感じられた。
「え、いつからって……はじめからだけど」
義兄上は、質問の意図がわからないと言った風にお応えになる。
それはいったい、何のはじめなのだろう。
「はじめ?」
「うん」
僕と同じ疑問を抱いたらしい公女様の問いかけに、義兄上は、こくりと一つ頷かれた。そしてそのままこう、続けられる。
「リーファを引き取った、はじめからだね」
「へ、陛下がその子供を引き取ったのは、」
「リーファが2歳の時だよ」
「っ!!」
公女様はぎょっと目を見開いて驚きも露わに義兄上を見つめていらっしゃった。
大公閣下が義兄上を見る目も同じ驚きに満ちている。
つまり義兄上は、僕が子供を身ごもる前から、僕が眠っている間に、僕を魔力を注いでくれていたということなのだろう。
僕が2歳の時からずっと。
僕のお尻に、雄の象徴を入れていた?
あれ、2歳って入るのかな?
「ああ、もちろん、はじめからリーファに魔力を注げたわけではないよ。はじめはね、触れたんだ。可愛くてね。眠っているリーファに、僕の体液を擦り込んで、リーファを僕の魔力で覆ったんだ。はじめに体内にまで魔力を注げたのはいつぐらいだったかなぁ……流石に小さすぎてね。少し時間がかかったよ」
流石に2歳では無理だったらしい。
でも、その時の幼い僕でも思い出しているのだろうか、義兄上はうっとりと目を細め、まるで自慢でもするかのようにそう話す。
僕は少しだけむっとした。
9
お気に入りに追加
1,571
あなたにおすすめの小説

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
博愛主義の成れの果て
135
BL
子宮持ちで子供が産める侯爵家嫡男の俺の婚約者は、博愛主義者だ。
俺と同じように子宮持ちの令息にだって優しくしてしまう男。
そんな婚約を白紙にしたところ、元婚約者がおかしくなりはじめた……。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!
みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。
そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。
初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが……
架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
リクエストの更新が終わったら、舞踏会編をはじめる予定ですー!

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる