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第一章・リーファ視点
1-44・自分で治せる
しおりを挟むまるで夜会でのことなんて、何もなかったみたいだ。
あれは夢か何かだったのだろうか。ううん、違うはず。ちゃんと、夜会は昨夜あった。僕が公女様に、わけがわからないことを言われたのは現実だ。
「リーファ? 大丈夫かい? どこか、痛いところとか、苦しいこととか……」
「大丈夫」
義兄上が心配そうに訊ねてきたので、僕はゆるりと首を横に振った。
大丈夫。
夢の中で。多分、夢? の中で。赤ちゃんが冷たくなって怖かったけど、ちゃんと義兄上があたためてくれたし、今、実際に僕のお腹はあたたかい。
きっと僕が知らない間に、義兄上が魔力を注いでくれたからだ。
だから、大丈夫。でも。
「だって義兄上が魔力を注いでくださったんでしょう?」
ほわと笑って確かめると、義兄上ははっきりと頷いて下さった。
「ああ。ちょっと状況がよくないみたいだったから。そうした方が良いかと思って。実際、リーファはとっても冷たくなっていて、怖かったんだよ? 今はあたたかいね。よかった」
あれ? 僕、冷たくなっていたの? じゃあ、夢だと思っていたのは夢じゃなかったってことかな?
よくわからない。
「ああ、そうか、もしかしてお腹とかお尻とか痛いのかな? ごめんね。最近はリーファが自分で治していたからうっかりしていた。治しておいたらよかったね。つらいだろう?」
確かに、義兄上が言うように、多分義兄上の大きな雄の象徴をいっぱい出し入れされたんだろうお尻の穴の所はヒリヒリしていて少し痛いし、お腹の奥の方も、多分いつもみたいにたくさん突いてくださったんだと思う、じくじくしていて違和感がある。鈍く痛むようにも思えるし、なんだか疼いている感じもする。
でもそんなの、いつものことだ。義兄上に魔力を注いで頂いたら、ほとんど必ずそうなるんだから、こんなの何にも問題じゃない。
だから僕はすぐにふるふると首を横に振った。
「大丈夫ですよ? 義兄上。このままでいいです。辛かったら自分で治せるし……それにもし、寝ている間に義兄上が治していたら、僕、きっと義兄上に魔力を注いで頂いたんだって気付けない。それは嫌です」
もし義兄上が寝ている間に治してしまっていたらと想像して、ぶすっと、口を尖らせた僕に、義兄上はびっくりしたみたいに目を瞬いた。
「え?! それは嫌なの?」
僕はきょとんと首を傾げる。
そんなにも驚くようなことだっただろうか。
「だって、お尻の穴とかお腹の奥が痛いのは義兄上が魔力を注いでくださった証拠です。それがわからないのはやっぱり寂しい」
しょぼんと呟いた僕に、義兄上は申し訳なそうに眉尻を下げた。
「そうだったの……それは今まで申し訳なかったね。私はてっきり、いたかったり苦しかったりが残るのはかわいそうだと思って」
今まで? それはいつのことを指しているのだろうか。少し不思議に思いながらも、僕は首を横に振った。
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