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第一章・リーファ視点
1-43・覚えてない
しおりを挟むお腹が、否、赤ちゃんが冷たくなっていくような気がした。
僕が赤ちゃんのことを、嫌だって思ったから?
怖い、怖いよ、義兄上。
どうしたらいいの?
冷たくなったら駄目な気がするんだ。
とってもとっても良くないことになる予感がする。
でもどうすればいいのかわからない。
怖い。
怖いよぉ。助けて、義兄上。助けて。
僕がお腹を抱えて丸くなって、泣きながらそう願っていたら、ふわと、お腹の奥の方が、じわじわとあたたかくなってくるような気がした。
赤ちゃん、あたたかくなってきた。
じゃあもう大丈夫かな?
それになんだかとっても気持ちいい。
まるで義兄上に魔力を注いで頂いている時みたい。お腹が熱くて、気持ちよくて、お尻の穴に、義兄上が固くて熱くて大きい象徴を、たくさんたくさん出し入れして、擦って、僕を気持ちよくしてくれている感じがする。
ああ、いい、いいよぉ、義兄上。
きもちいい! もっと、もっと、もっと!
もっとたくさん気持ちいいが欲しいの。もっともっとたくさん、お腹、熱くならないと。だって赤ちゃん、冷たいとダメなんだ。だから義兄上。たくさんちょうだい?
お腹をもっともっと熱くして。義兄上の熱い体液と魔力で満たして。たくさん、たくさん、僕に注いで。
ねぇ、義兄上。
義兄上、義兄上、義兄上!
「ぅ……ぁにぅ、ぇぇ……」
ふわっと、重いまぶたを何とか押し上げた。
「リーファ? 気が付いたかい?」
ぼやけた視界の中には、とっても心配そうなお顔をした義兄上。
ぼやけてしまうぐらい物凄く近いところにあった義兄上のお顔が、わからなくなったかと思うと、ちゅっと、義兄上はどうやら僕のお顔のいろんなところを、ちゅ、ちゅ、とついばみ始めたみたい。
少しだけくすぐったい。
「ぅうん、義兄、上?」
ぼやっと、それでもさっきよりかは幾分も鮮明に義兄上を呼んだ。
そうしたら義兄上は、
「なんだい? リーファ」
と、穏やかに微笑んで下さって。
ようやく気が済んだのか、少し離れてくれた義兄上のお顔をやっとはっきり見ることが出来る。
そうすると義兄上はいつも通り、僕がとっても大切なんだって、その眼差しだけでとてもよく伝わってくるようなお顔で微笑んでいた。
いつも通りの義兄上だ。
そんな義兄上のお顔を見て、僕はとてもとても安心する。
「義兄上」
でも、そうやって義兄上を呼んだ声は情けなく震えていた。
視界が滲む。鼻の奥がつんとする。なんだか泣いてしまいそう。
これなんの涙なんだろう。安心したからかな?
もしかしたら、なんだかとっても怖い夢を見たからなのかもしれない。
僕の、お腹にいる赤ちゃんが、とってもとっても冷たくなってしまう夢。
でも、夢の中でも義兄上は助けて下さった。
冷たくなってしまうのを温めるように、僕にたくさんたくさん魔力を注いで。
ん? 魔力を、注いで?
はたと気付く。
改めて義兄上を見る。義兄上は裸だ。お洋服を着ていない。そして多分、僕も裸。
あれ? 昨夜はどうしたんだったっけ。義兄上にいつも通り、魔力を注いで頂いていたのかな?
お部屋は、ドゥナラルの公邸の中で、僕と義兄上に貸してもらっている寝室みたいだった。
ここに着いてからずっと同じお部屋だからもう覚えているよ! だってここで寝るの、今日で3回目なんだもの。一昨日もその前も、僕はまさにこのベッドの上で、義兄上に魔力を注いで頂いた。とってもとっても気持ちよかった。いつも通りだ。
でも、あれ、昨日は?
昨夜は確か夜会があった。そのはず。
慣れない夜会で僕は疲れてしまって。そうしたら義兄上が、ちょっと涼んでおいでって。だから僕はバルコニーに出た。そして。そして……――そうだ、そうだった。
僕はあの公女様に、なんだかわけのわからない、怖いことをいっぱい言われたんだ。とても悲しくなってしまうようなことをたくさんたくさん言われて、僕、どうしたらいいのかわからなくなって、そして。
そうしたら、義兄上が、僕を呼んでくれた。
「リーファ」
って。だから、僕は義兄上のお声に安堵した。
……で、その後どうしたんだっけ?
僕は首を傾げた。
その後の記憶が全くない。僕はいったいどうしてしまったの? でも。
今、僕と義兄上は裸で、ベッドの中で、僕は義兄上にぎゅっと大切に抱きしめてもらっていて、お尻の所には、いつも通りとっても硬くて熱い義兄上の男の象徴の感触がある。
それで、お尻の穴、お腹の中は、じんじんと痺れて疼いていて、いつも通り、義兄上に魔力を注いでもらった後みたいだった。
うん? あれ? 僕、覚えてないんだけど、義兄上に、魔力を注いでもらったのかしら。
でも、お腹は熱いし、赤ちゃんはちゃんと、義兄上の魔力を食べられたみたいだし、お腹の中はじんじんするし、やっぱり義兄上に魔力を注いでもらったみたいなんだけど……僕は何にも覚えていなかった。
あれ?
不思議に思って、戸惑いながら義兄上を見る。
そこにあったのは、いつも通り。とっても優しい、義兄上のお顔だった。
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