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第一章・リーファ視点
3-38・夜会①
しおりを挟む「おお、これはお美しい。見違えましたな! いえ、普段から大変お美しくあられますが、今宵は一段と輝いておられる!」
夜会が始まって、諸々の挨拶を済ませた後、改めて義兄上に伴われて、大公閣下の元へ訪れると、とても過剰に容姿を褒めて頂けた。
輝いているのは装飾品のことだろうか。確かに、きらきらピカピカしたものばかりだけれど。
「もったいないお言葉です」
僕は気恥ずかしさにはにかんで微笑んだ。
だって本当にこういった場には慣れていないんだ。今だって、義兄上がついていて下さらないとどうにもならないぐらいに。
マナーだとかなんだとかは、一応身につけてはいるのだけれど。
「反応も初々しくお可愛らしくあられる。これほどにお美しい殿下の隣におられて、陛下もお幸せでございましょう。誠におめでたいことだ」
「ありがたいことだと、日々実感しています」
「そうでしょう、そうでしょうとも!」
続けて義兄上と大公閣下はそんな会話も交わしておられて、社交辞令とかかなと僕は口を挟まず大人しくしておいた。
とりあえず言祝がれていることだけを理解しておく。
その後もいろいろな方と、当たり障りのない歓談が続いて、このまま何事もなく夜会が終わればいいと僕は願っていた。
「これはこれは陛下! お会いできて光栄です。そちらは?」
「リアファディエと申します。彼の皇后陛下の忘れ形見の。今回は後学のため、同行させました」
僕の紹介にはほとんど必ず母様が引き合いに出される。それが避けては通れない程度に、僕は母様にそっくりなのだそうだ。
「なるほど! お噂はかねがね。しかしこれほどまでにお美しいとは」
「ありがとうございます」
そんな今夜、幾度目とも知れない会話を繰り広げ始めた矢先だった。
ざわと、空気が揺れる気配に、ちらと視線をそちらに向けると、案の定、今夜は不参加のはずの第二公女様が、会場に現れていて。隣にいる義兄上の気配が、ほんの僅かだけ尖ったのが感じ取れた。
「義兄上」
そっと心持ち背伸びをして、義兄上にだけ聞こえる程度の小声で囁く。
義兄上は、微かに頷いて、
「案の定、来られたみたいだね。閣下は止めきれなかったようだ。リーファは私の側から離れないように」
「わかりました」
元々義兄上は、エスコートするかのように僕に寄り添って下さっていたのだけれど、改めてしっかりと腰に手が回される。
まるで放さないと、示して下さっているみたいだった。
第二公女様は予想通り、おそらくは義兄上を目指してだろう、まっすぐこちらに歩み寄って来て。
遠慮してか、それとも巻き込まれたくなかったのか、素早くその場を辞した先程の誰かの代わりに、今度は第二公女様が目の前に立っていた。
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