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第一章・リーファ視点
1-33・公邸での歓待②
しおりを挟む大公の視線が、僕のお腹の辺りで止まる。
そこで僕はようやく気付いた、ああ、そうか、大公閣下だもの、それなりに多く魔力を持っている。なら、一目でわかったのだろう、僕の今の状態が。だからこそのさっきの視線。
義兄上も、大公閣下の視線に気付いたみたいだった。
「ああ、お気付きになりましたか。まだ公表はしていないのですが」
「そうですな、お聞きしておりませんでしたので驚きました。この度はお連れしてもよろしかったのですか? 大事な時期でいらっしゃるのでは?」
「今は安定していますよ。ただ、だからこそ長く離れるべきではないと判断いたしました」
多分、話題になっているのは、今、僕のお腹の中に子供がいることについてで、多分、大公閣下は気遣って下さったのだと思う。
それに対して、義兄上は、だからこそだとお応えになった。
なるほどと、大公閣下は頷いた。今、僕が義兄上と離れない方がいいというのは、理解できることだったのだろう。
「これはこれは……お祝い申し上げねばなりませんなぁ。ようやくお世継ぎのご誕生ですか」
「それに関してはは本人次第ですが、そう受け取って頂いても構いません」
このやり取りはつまり、大公閣下は、僕のお腹の子供は義兄上の子供となるのかと確認して、義兄上は今、肯定されたのだと思う。
大公閣下はうんうんと何度か頷かれて、改めて僕へと向き直った。
「失礼いたしました、リアファディエ殿下。……陛下とお呼びした方が?」
「それはまた、いずれ」
「そうですか。でしたら、リアファディエ殿下。このような時期に我が国を訪れて下さるだなんて。なんという僥倖でしょう。我々は貴方を歓迎いたします」
「ありがとうございます、この度はよろしくお願い致します」
初めの方に、どうして大公閣下が、僕の呼称について義兄上に確認を取ったのか、僕は意味が解らなかった。僕は別に皇帝になる予定もないし、義兄上から譲位のお話しなんかも受けたことはない。一瞬、不思議には思ったのだけれど、結局、呼称が変わることはなかったし、大公閣下の確認の意味を義兄上はわかっていらしたみたいなので、僕は深く考えないことにして、ただ大人しくありきたりの挨拶を返すにとどめた。
どうやら大公閣下は僕のことも、僕のお腹の子供のことも、受け入れて下さったみたいで、その上、お祝いしないと、とかまでおっしゃっていて、僕はよかったとほっと安堵する。
別に何も不安に思っていたわけではないけれど、言祝いでもらえるとやっぱり嬉しくて。だから僕はそんな僕達のやり取りを、苦々しい思いで見ている人がいることなんて、まったくわかっていなかったんだ。
この時の僕は、ますますしっかり教えてもらわないと! ってそんなことだけを思っていた。
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