【完結】身に覚えがないのに身ごもりました。この子の父親は誰ですか?

愛早さくら

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第一章・リーファ視点

1-26・戻ってきた兄様と②

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 とは言え、兄様が固まったのなんてほんの一瞬で、ただ、兄様はその変な笑顔のまま、続けて僕に確認をしてくる。さっき、ヴィーフェに訊かれたことと同じようなものばかり。

「えーっと、もしかしたら、ペーリュが、リーファの知らない所でリーファに魔力を注ぐような行為をしたのかもしれないってところは気にならないのかな?」

 僕は少しだけ考えた。

「気にはなります」
「気にはなるんだ?」
「はい。だってずるいでしょう?」
「うん?」

 さっきヴィーフェに言ったのと同じことを兄様にも言うと、兄様はさっきのヴィーフェよりずっと、わけがわからないって顔をする。

「僕、義兄上が魔力を注いでくれる時のことは、全部知ってたい・・・・・です。だから、もし知らない間の僕が、僕の知らないことを知ってるのは、ずるいなって思います」
「えーっと、つまり、例えば意識がない時の自分に嫉妬してる、みたいな解釈であってるのかな?」

 兄様なりに僕の言葉をかみ砕いたのだろう、改めて確認されたので、僕もちょっと考えて、

「嫉妬……多分?」

 多分、あってると思って曖昧に頷いた。

「自分に嫉妬しちゃうぐらい、相手がペーリュだったらいい・・ってこと?」
「義兄上だったら嬉しいです。それ以外なんて想像したくもない」

 とても気持ち悪くなって、顔をしかめたら、兄様は慌てて、

「ああ、うん、いいよいいよ、想像しないでおこう!」

 なんて、僕の想像をやめさせた。
 僕は素直に考えを放棄する。元々想像したくないからね!

「それで、これから魔力を注がれる相手も、ペーリュでいいんだよね? 魔力を注ぐだけ・・だったら、例えば僕でも、」
「嫌です!」

 僕は気付くと、兄様のたとえ話を、遮るようにはっきりと拒絶の言葉を口にしていた。
 同時にさっと兄様から離れて距離を取る。
 魔力を注ぐだけ・・
 量は少なくなるけど、それは例えば手をつないだりだとかぐらいの触れあい・・・・でも出来るんだ。
 別にお腹の中に、直接注いだりしなくてもいい。
 ただ、そうするとどうしても魔力は足りなくなって、魔力欠乏に陥ることは避けられないし、しばらくは起き上がることさえできなくなるかもしれない。それでも、直接大量にお腹へと魔力を注がなくても、子供を育てるだけ・・なら、出来なくもなかった。生まれるまで続くだろう体調不良に付き合う覚悟があるのなら。
 でも、今、僕が嫌だと思ったのはそんなことが理由じゃない。
 理屈じゃない拒否感。僕の心が拒絶している。
 僕から距離を取られた兄様は、慌ててさっきのたとえ話・・・・を否定した。
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