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第一章・リーファ視点
1-25・戻ってきた兄様と①
しおりを挟む随分経ってから、ようやく戻ってきた兄様は、僕を見るなりどうしてか、謝罪の言葉を口にした。
「ごめんね、リーファ! あんな曾孫に育ててしまって! いや、僕、ペーリュのことは育ててないんだけど。でも曾祖父として責任を感じるよ……」
そうしてぎゅっと抱きしめられたんだけど、僕は意味が解らない。
ん? 曾孫? ペーリュ? ってことは、義兄上のこと? 何の話なんだかさっぱり分からない。
兄様はどうして謝っているんだろう。
「ああ、ペーリュになんて預けなければ! 初めから僕が引き取ればよかった」
それはもしかして僕を、ということなんだろうか。ちょっと聞き捨てならないんだけど。
僕の気配が尖ったのに気付いたのは兄様じゃなく、ヴィーフェだったみたいで、彼は、
「母様」
と、呼びかけることで、兄様の言動を止めてくれたようだった。
「リーファ、嫌がってますよ。いい加減にしてください」
別に抱きしめられるのは嫌じゃないんだけど、兄様が口にした言葉の方は嫌だったので、ちょっと憮然とした顔で僕は頷く。
「え?! 何が嫌だったのっ?! でもリーファ、お前ペーリュに、」
「母様」
もう一度兄様の言葉をヴィーフェが遮って、そこで初めて兄様はヴィーフェの方へと視線を向けた。
「それ以上は馬に蹴られます。余計なお世話ってやつみたいですよ」
「? どういうことだい」
お馬さんに蹴られるっていったい何のことだろう、ヴィーフェの発言の意味さえ変わらないままの僕を放って、2人は通じ合っているようだった。
いや、兄様には通じてないのかな? 訊き返してるし。
兄様からの質問に、ヴィーフェはひょいと肩を竦め、僕に視線を寄越してきた。
「リーファ」
「なぁに?」
呼ばれたので訊ねる。
「そのお腹の子供の父親。ぺーリュだったら嬉しいんでしょう?」
ああ、兄様がいない間に話したことかと思い当たった。
「うん、嬉しいよ?」
「え」
頷く僕に兄様がぎょっとして、僕の方こそ、えっ? ってなる。
そんなに驚くようなことを、僕は言っているのだろうか。
「リーファ、子供の父親がペーリュだったら嬉しいの?」
「そうですけど……なんでそんなこと聞くんです?」
「だって、それってつまり、ペーリュが、リーファを……」
兄様がそこまで行って語尾を濁す。だから、何故、そんなことを聞くんだろうか。
そんなに僕の返答はおかしいの? でも。
「義兄上以外だったら嫌だけど、義兄上だったら嬉しいです」
「うん?」
言い切った僕に、兄様は何とも言えない顔で微笑んで固まった。
ヴィーフェの溜め息が聞こえてきて、だから、なんでみんなそんな反応なのかと、僕はなんだかおもしろくない気分で、ぷくと頬を膨らませるのだった。
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