【完結】身に覚えがないのに身ごもりました。この子の父親は誰ですか?

愛早さくら

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第一章・リーファ視点

1-24・残された甥っ子と僕②

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「ねぇ」

 どれぐらい考えていたんだろう、ちょっとずつ飲んでいたお茶が半分ぐらいなくなってから、ようやくヴィーフェが口を開いた。

「なぁに?」

 きょとと僕が首を傾げると、ヴィーフェはまた少しだけ考えて、

「さっき、母様と話してた子供の話なんだけど」
「うん」
「リーファは、魔力を注いでもらう相手、ペーリュでいいの?」

 そんなことを訊ねてきた。
 ちなみにヴィーフェは義兄上のことを、兄様と同じように愛称で呼ぶ。
 多分、義兄上が兄様の曾孫だからなんだと思う。
 小さい頃は僕と一緒に、義兄上って言ってたと思うんだけど、いつの間にそうなったのだろう。
 記憶になかった。多分、いつの間にか、だ。
 それはともかく、ヴィーフェの問いに僕は余計に首を傾げた。

「なんでそんなこと聞くの?」

 どうしてそんなことを疑問に思うのだろう。当たり前の話なのに。

「一応、確認」
「ふーん? 逆に、義兄上あにうえ以外なんて嫌だよ」
「そうなんだ」

 むっとして返した僕に、ヴィーフェの返事は淡々としている。でもまだ更に言葉を続けた。

「子供の父親、わからないって言ってたけど」
「うん、わからないんだー。僕、いったいいつ、誰に魔力を注がれたんだろ?」

 全く何も記憶にない。

「それ、もしペーリュだったらどうする?」
「どうするって……どうもしないよ? 義兄上だったら嬉しい」
「嬉しいの?」
「うん」
「でも、そうしたらペーリュ、リーファが知らない間・・・・・に、リーファに魔力を注いでたってことになるんだよ?」

 いったいヴィーフェはこんな話をして、何の確認がしたいのか。僕には全くわからなかった。それに何か問題でもあるというのだろうか?

「それがどうかしたの? 僕に心当たりがないんだもの、そりゃ、僕が知らない間・・・・・に魔力を注いだんだと思うけど」
「嫌じゃないの?」
「どうして?」
「だって、自分の知らない間に、そんなこと・・・・・をされてたってことだよ? リーファの意思・・とか、そういうの全部無視して」

 ますます僕は首を傾げた。
 どうしてヴィーフェはそんな、当たり前・・・・のことばかり聞いてくるんだろう。
 僕の知らない間・・・・・にやってるんだから、そりゃ、僕の意思・・なんてそんなもの、確認のしようがない。だって僕は知らない・・・・のだから。無視することにもなるだろう。
 それがなのかわからないから、もちろん、僕は少し怖いと思っている。でも、もし、その誰かが義兄上だったら。

「他の誰か・・だったら、怖いし嫌だけど、義兄上だったら嬉しいよ?」
「嬉しいんだ」
「うん」

 一度頷いて、でもすぐに思い直した。

「あ、でもちょっと残念かも」
「残念?」
「うん。どうせなら僕が知ってる時・・・・がいい。知らない時の僕・・・・・・・が僕の知らない義兄上を知ってるって思うと、なんだかずるい・・・気もするし」
「両方リーファでしょ?」
「だって僕知らない・・・・んだよ? ずるくない?」
「そっか」

 僕は義兄上が魔力を注いでくれている時のことは、出来れば全部、覚えていたいって思う。全部、知ってたい。だからちょっとだけ残念。
 でも、この子の父親がもし義兄上だったら、それはやっぱり嬉しい。
 よくわからないけど、ヴィーフェはそのやり取りで何か納得できたことがあるみたいだった。そして、

「でも、よかったね」

 そんなことを言ってきて。

「うん?」

 よくわからない僕は、やっぱり首を傾げる。
 うん? ずるいのがよかったの? ちっともよくないんだけど。
 今度はヴィーフェも首を傾げた。

「魔力、これからもペーリュに注いでもらうんでしょ?」
「うん」
「じゃあ、よかったじゃない」

 また、そう言われる。
 他の人じゃなくて、義兄上が申し出てくれてよかったねってことかな?
 そう思った僕は、今度はちゃんと頷いた。
 それっきり、元々ヴィーフェはおしゃべりなタイプじゃないから、その後は時折、ぽつぽつと思い出したように会話するだけで、大部分の時間をぼんやりとして過ごす。
 義兄上が言った通り、ゆっくりすることになったなぁっなんて思いながら。
 その義兄上と、いったいどんなお話があったのか、すぐ戻ると言った兄様は、その後も更に少しの間、ちっとも戻ってこなかった。
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