【完結】身に覚えがないのに身ごもりました。この子の父親は誰ですか?

愛早さくら

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第一章・リーファ視点

1-22・訪ねてきた兄様②

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 僕の怯えが伝わったのだろうか、兄様はすぐに、怖かった笑顔をちょっとだけ治して、

「話を遮ってごめんね、申し訳ないんだけど、僕の質問に答える形で、教えてもらってもいいかな?」

 そんなことを言ってきた。
 僕が自由に話すのじゃ、ダメってことなんだろうか?
 僕は少しだけしょんぼりしながら、こくりと小さく一つ頷く。
 僕のしょんぼりは、勿論、兄様には伝わっていて、兄様は少しだけ気まずそうな笑い方をした。

「リーファのお話を聞きたいのはやまやまなんだけどね、ちょっと先にいくつか確認したいことがあって……――まず、子供が出来たのは、いつ?」

 兄様は優しいから、僕を慰める為にだろう、一言添えて、改めてという風に質問を始めた。

「昨日です」
「そう。きっかけとかあるのかな?」
「昨日、中庭で義兄上あにうえがドゥナラル公国の公女様とご一緒でいらっしゃるのを見たんです。それで僕、義兄上もいつか結婚するのかな、それは寂しいなって。子供がいたら寂しくないかなぁーって思って、子供ってどうやって作ったっけ? って試して・・・みたら、それで、」
「あ~~~……なるほど、試した・・・だけだったのに子供に成っちゃったのかー」

 僕は一生懸命、訊かれたことに応えた。
 とは言え、昨夜、義兄上にしたのと同じ説明だ。
 兄様は義兄上と同じように、こんな僕の説明でもすぐに理解できたみたいだった。なるほどと何度も頷いている。

「それで、さっきお父さん・・・・が誰かわからないって言ってたけど……」

 僕は首を縦に振った。さっき確かにそう言った。だって本当にわからない。

「わからないです。だって、赤ちゃんって、誰かに魔力を注いでもらわないとできないでしょう? でも僕、誰かにそんなこと・・・・・、されたことない」

 魔力を注いでもらったのは、昨夜、義兄上にしていただいたのが始めてなのだ。それじゃあ子供なんて出来ないはずなのに。

「でも子供が出来た。なら、誰か・・がリーファの知らない所で・・・・・・、リーファに魔力を注いだってことになる」
「そうなんです。でも僕、本当に心当たりがなくて」

 昨日から何度も記憶をさらっているけど、本当に全く心当たりがない。
 僕はいつ、誰にそんなことをされたのだろうか。
 昨夜、義兄上にされたようなことを、他の誰かに?
 とても嫌だと思った。それになんだか怖かった。

「ああ、リーファ、そんなに不安そうな顔をしないで。大丈夫・・・だから」

 僕が顔を曇らせて、下を向いてしまったのを見て、兄様は僕の方から手を放して、だけど片手でポンポンと、僕の頭を撫でた。

「大体の事情はわかったよ。最後にこれだけ聞かせてくれるかな? 子供を育てる為の魔力を、君の・・義兄上……――ペーリュにもらうことになったって言っていたけど、もう貰ったのかな?」

 兄様の問いかけに、僕ははっきりと頷いた。

「はい。義兄上が助けて下さるとおっしゃって、魔力も注いでくださると。実際に昨夜、頂きました」

 たくさん、たくさん、注いで頂いた。
 これを言うのは少し恥ずかしいような気もしたけれど、誤魔化すようなことじゃない。だって子供を育てるには魔力が要るんだ。
 だから僕はこの子を産みたければ、誰か・・にお腹の中へと魔力を注いでもらわなければいけない。
 義兄上が注いで下さると申し出て下さってよかった。
 だって僕、義兄上以外なんて嫌だもの。昨夜、義兄上にして頂いたみたいなことを、義兄上以外の誰か・・とする。想像もしたくなかった。多分、兄様にだって、今、僕に魔力は少しも注いでほしくない。義兄上だけがいい。
 兄様は僕の応えを聞いてにっこりと微笑んだ。

「うん、よくわかったよ」

 それはなんだか、またしても、何処か少し怖い笑顔だった。
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