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第一章・リーファ視点
1-20・幸せな朝②
しおりを挟む「リーファ? 目は覚めているかい?」
どれぐらいそうしていたことだろう。なかなか起き出さない僕が心配になったのか、義兄上が様子を見に戻ってきてくれたみたいだった。
「義兄上」
僕はゆっくりと、両手をついて体を起こす。占められていた天蓋が開けられて、少し眩しい。
朝、というよりはきっと、昼に近い光の中で、義兄上が心配そうに僕をのぞき込んでくれていた。
「大丈夫かな? 何処か不調は? 気持ち悪かったりはしない?」
そっと頬に手を添えられて、ちゅっと、手を添えられたのとは逆の方の頬に唇を寄せられる。朝の挨拶だ。
片側が終わったら逆側にも。続けて、額に、鼻先に、そして最後は唇に、ちょんと触れて、挨拶は終わった。
いつも通りのそれ、だから僕も、応えるように、伸び上がって唇を出す。そうしたら義兄上は、頬を順番に差し出して、額も、鼻先も僕の唇に近づけてくれ、そして最後はやっぱり同じ、義兄上のその部分と触れ合った。
ちゅ、ちゅ、ちゅ、ちゅ、ちゅ。小さなリップ音。
いつもと同じなのに、なんだか今日は特別な気がする。それはもしかしたら昨夜、義兄上に魔力を注いでもらったからなのかもしれない。
まるで夫婦とか恋人同士みたい。なんだかくすぐったい。
思わず笑ってしまったら、義兄上は当たり前にすぐに気付いて。
「リーファ? どうしたの? 何かおかしかった?」
そんな風、穏やかに問いかけてきてくれたから、僕もふわっと微笑んで。
「うふふ。ううん、何にも。ただ、なんだか幸せだなぁって」
そうやって答えたら、義兄上は一瞬、きょとんと眼を瞬かせ、次いで、僕のことが、可愛いくて可愛いくて仕方ないって叫んでるみたいな顔で笑ったんだ。
それはとってもキレイな笑顔で、どうしてだろう、なんだか僕の胸はドキドキした。
まるで義兄上のことが好きみたい!
ううん、義兄上のことはもうずっとずっと前から大好きなんだけど、なんだか今は特別な好きだ。
魔力を注いでくれたのが義兄上で良かったと思った。だからきっと、こんなにも幸せな朝。
赤ちゃんのお父さんは、やっぱりわからないままだけど。これから魔力を注いでくれるのが、義兄上だけなんだったらそれでいい。
そんな風、くすぐったい気持ちでいた僕は、きっと色々やっぱりよくわからないままだったのかもしれない。
僕はあくまでも義兄上の義弟で。それが誰から、どんな風に見えるのかっていうようなことを。全く考えていなかった。
初めから予定されていた視察に同行した先、他国でのこと。だって、国内には、僕と義兄上がどんな風に仲良しだって、何か言ってくるような人なんていないからね。でも、他の国では違うってことを、僕は知らなかったんだ。
それが分かったのは、その朝から、そんなに経っていないような頃だった。
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