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第一章・リーファ視点
*1-11・初めてではないくちづけ
しおりを挟む結局、今、何時なのだろうと時間を確認すると、時計の針は夕食は過ぎていて、でも寝るには少し早い時間を指している。
思っていたよりもとてもたくさん眠っていたみたいで、自分でも少し驚いた。
手早く用意された軽食を、義兄上と二人で食べ始める。
義兄上はいつも通り、とても甲斐甲斐しく僕の世話を焼いてくれて、自分が食べることこそ疎かになっているぐらいで、仕方なく義兄上の口には、僕が軽食を運んであげることにした。
まるで食べさせ合うみたいな形になってしまったけれど、これもまた、今までもままあったこと。
特に、今日のように寝落ちてうっかり夕食が遅れてしまったり、または僕が体調を崩したりした時には、むしろいつもこんな風なのだ。
そんな僕と義兄上を知った時に、兄様はなんとも言えない顔をしていらしたけど、実はそのお顔の意味は僕には今もわからないまま。
「気にしなくていいよ」
とも言っていらしたから、気にしないようにしている。
とにかく、いつも通りに軽食を摂って、それから僕は改めて義兄上を見た。
だって寝る前に言っていたから。
僕のお腹に宿った、子供を育てる為の魔力を、義兄上が注いでくれるって。
それはつまり今から義兄上が、僕に触れてくれるということだった。
義兄上も僕を見ている。
柔らかい眼差し。
「リーファ」
とってもとっても大切そうに僕の名前を呼んで。
近づいてくるキレイな顔。寄せられた唇に応えるように、僕はそっと目を閉じた。
ふにと、義兄上の唇の感触が、僕の其処に伝わって、触れ合った所から、また魔力が流れ込んでくる。
初めての感触。
とっても気持ちいい。
否、くちづけそのものは今までにも何度だって交わしたことはあったんだ。だって僕は本当に小さい時、物心ついた時にはいつだって義兄上と一緒に寝ていたし、お風呂も一緒だったんだから。
そんな時に義兄上は僕にくちづけをした。
「リーファが可愛いから、したくなっちゃうんだ」
だって。
今までに何度も義兄上とかわしてきたくちづけ。
「誰にも教えてはいけないよ? これは二人だけの秘密だ」
なんてことも言われたことがあって、秘密って言う響きが、なんだかワクワクしてとっても嬉しかったのを覚えている。
だから、2人の秘密のくちづけ自体は、今までに何度も交わしたことがあって、でもこんな風に、触れたところからすぐに、魔力を注がれたことなんてなかった。
つまり、初めて感触であることに間違いはない。
あたたかな魔力。すぐに僕に馴染む義兄上の魔力。
こうやって少しだけ注がれると、なんだかとっても足りないような気がしてきてしまって。
「義兄上、もっと……もっと下さい」
気付くと僕はくちづけの合間に、そんな風にねだっていた。
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