【完結】後宮の秘姫は知らぬ間に、年上の義息子の手で花ひらく

愛早さくら

文字の大きさ
上 下
46 / 96

44・持ち掛けられた相談事①

しおりを挟む

 小美シャオメイは紅嬪に嫌われている。
 少なくとも、間違っても好かれてなどいないことを知っていた。
 この後宮内で、小美にお世辞にも褒められた態度ではない者など、紅嬪に限らずいくらでも存在していたがその中でも紅嬪は、あるいは一等、小美に嫌味などを投げかけて来る頻度が高かった。
 つい昨日も、不快になるような絡まれ方をしたばかり。
 自然、小美は彼女の、嫌悪の滲んだ笑みや、隠さない睥睨、それらに相応しく歪んだ表情以外など、ほとんど目にしたことがない。
 たとえ華やかに微笑んでいたとしても。紅嬪はその眼差しに、小美への蔑みを隠さないのだ。
 自分にあまりにも正直だと言ってしまってもよいのだろう人物なのだと思う。
 だというのに、これはいったいどうしたことなのだろう。
 今、目の前にいる紅嬪は、そんな昨日までの様子など見る影もなく、ひどく弱々しく小美の目には映っていた。
 なんと言葉を駆ければいいのかわからない。
 桃西宮へと至る道の端、ちょうど昨日、他でもないこの紅嬪に話しかけられた場所の近く。更に言うならば、小美自身が寝起きする、明桃宮のすぐ傍で。
 まるで小美を待っていたかのように蹲っていた紅嬪は小美の姿を認めると縋るかのように更に身を伏せたのである。
 いったい何が紅嬪をこうさせるのか。
 確か先程、体調がすぐれない様子で午餐の場を辞していたはず。
 まさか更に具合を悪くでもしたというのか。
 眉根を寄せつつ無視も出来ず。
 どうすればよいかと戸惑うばかりの小美に、紅嬪は消え入りそうな声で訴えてきたのである。曰く、

「どうか……どうかご慈悲を、明妃様……」

 などとそう。
 常の華やかな雰囲気など見る影もない。
 無下にするにはあまりにも憐れなその様子に、小美は思わず、傍らのリァンルイを窺っていた。
 彼ら二人は揃って厳しい顔つきを崩さず、紅嬪を見ている。
 だが、そこに敵意は見えず。率先して排除せねばと動くようではないようだと小美は判断する。
 ならばいったいどうすればいいのか。
 それはきっと小美自身へと委ねられているのだろう。
 辺りを伺ってみる。
 他に人影はない。
 午餐の席では、紅嬪につき従っていた宮人の姿も、どこにも。
 後宮内は確かに、妃嬪が1人で動くことを咎められるような場所ではない。
 だがその実、宮人の一人も伴わないなどと言うことはそう多いことではなかった。
 そうは言いつつ昨日も紅嬪は一人だったようだけれども、その時だって珍しいと思ったものである。
 実はここを更に進めば桃西宮に至れはするのだけれど、多くの者が通る道とは言い難く、それもあってこの辺りはあまり人通りの多い場所ではなかった。
 だけども決して、全く誰も通りかからないなどと言うことはない。
 こんな、言ってしまえば誰が見るやもわからないような所でこんな風に蹲っているだなんて。
 小美は微かに息を吐いた。
 息を吐いて、そして。

「――……紅嬪様。ひとまずは妾の宮へ。そちらでお話を伺いましょう」

 何時までもここでこうされていても仕方がないと、そう声をかけるより他になかったのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

処理中です...