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37・午餐③
しおりを挟む実際に蒼貴妃がどういうつもりでいるのかはわからない。
だけど彼女が小美に嫌に親切なのは本当だ。
正后の次に小美と関りが深いのは蒼貴妃だった。
ちなみにその次は、実は紅嬪である。
紅嬪はこの後宮内で一番、小美に何事かを言ってくることが多い。
それは翻ると関りが深いと言い換えることも出来た。
全く有り難くない話ではあるのだけれど。
なにせ紅嬪が小美に告げる言葉なんて言うならば嫌味のようなものばかりなのだから。
そんな紅嬪が座っている場所は朱貴妃の近く。
しかし朱貴妃からは一番遠い席だった。
序列順だ。
朱家の関係の者の中で、彼女が一番位が低いので仕方のない話なのだろう。
この場にいる妃嬪の数は正后を含めて16名。
それがつまり今、後宮にいる才人より上の位の妃嬪の全てで、それが多いのか少ないのかすら、小美にはよくわからない。
もちろん、他に皆に仕える宮人もいるので実際に広間にいる数はそれよりも当然ながらそれなりに多い
だからと言って窮屈に思うような広さでもないけれど。
それぞれ四家から四名ずつで、均衡を保つための人数なのだろうなとは思った。
小美が知る限り、常にこの数となるようにされているようだから余計に、だ。
翔兄も即位したら同じ数の妃嬪を持つのだろうか。
ふと、そんなことに思い至ってしまい、ずきと胸が痛んだ気がした。
だけどなぜそんな気がしたのかがわからず、自然眉根を寄せた小美に、蒼貴妃がたおやかに声をかける。
「久しぶりにお顔が見れてようございましたわ、明妃様」
そこに含まれた色は柔らかな喜色に満ちていた。
年齢を感じさせない若々しい美しさを保ちつつも、どこか泰然とした、おっとりとした様子を見せる蒼貴妃はこの中では一番年嵩で、正后よりも5つ上。
それでも主人となる皇帝よりも下でかつ、先帝の頃より貴妃の座に居続ける存在でもあった。
皇帝が変われば、基本的に後宮は一度解散される。
例外はその前にすでに次の皇帝の妃にもなっている者だけ。
つまり蒼貴妃は皇帝が即位するより前から親しかったということなのだろう。
玄貴妃を始め、他にも数人そう言った者がいて、しかし、後宮内の入れ替わりはそれなりにあり、今残っているのは蒼貴妃と玄貴妃の二人だけだった。
必然、二人とも、正后よりも年嵩である。
翻って、小美が幼い頃からをよく知っている二人でもあった。
だからというのもきっとあるのだろう。
二人は特に、時に小美をまるで小さな子供のように扱うことがあるのである。
「ご無沙汰致しておりまして申し訳ございません。妾も久しぶりにお顔を拝見できて、嬉しく思っております」
小美はなんと返したものか困り、ただ柔く眉根を下げ、そう答えるより他にないのだった。
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