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36・午餐②
しおりを挟む食事は和やかに過ぎた。少なくとも表面上は。
そもそもこの会の主催は正后である。
下手な騒ぎ立てなどしては彼女の顔を潰すことになることをわからない者はこの後宮にはいないのだ。
そんな中で、しかし小美が言葉を交わすのは正后と、彼女に仕える宮人たち、あるいは四貴妃達の一角に留まっていた。
四貴妃とはつまり、ここ、華大国を支える名家、四家をそれぞれに代表するとも言える存在だ。
正后は元は玄家の出で、小美自身は白家の出身だった。
つまり少なくとも玄貴妃と正后、小美と白貴妃は家系を同じくするということである。
もっとも、特に主家に近い者達は縁戚関係を結んでいるので、少し遡れば皆、親戚ということにもなるのだけれど。
血縁の薄さとなると、むしろ嬪より下位の者達との方が遠いが、それがつまり身分の差とも言ってよかった。
また、そうは言ってもそもそもが後宮に入るには最低限四家の何処かからの推薦が必要となるので、結局は遠くとも血縁であることが多い持ちがいなく、現に瑞も白家の出。
涼は例外であり、しかし皇太子の影武者を務めていると言われている辺り、おそらくは王家の縁者ではないかと思われる。
先代、あるいは先々代が時代へと譲位してから生まれた皇子なのではないかと予測しているが聞いたことはない。
特に帝位についている間は一人も子を持たなかったと聞く先々代辺りが怪しいのでは、などと、小美はこっそりと思っていたりもする。
ちなみに稀に国外から入宮する者もいないではないのだが大変に稀であり、その場合も四家のいずれかからの推薦は必要であり、現在後宮には一人も存在していない。
だからこそある意味では後宮で過ごす親戚の集まりと言えなくもないこの場で、小美が正后の次に話すのは当然と言えば当然、白貴妃である。
あるいは四貴妃の中でも一番たおやかだと言われていて、実際に小美にもまるで実の娘と接するかのよう、柔らかく対応してくれる蒼貴妃だった。
なお、この場には公主たちの姿はないが、それはそもそもこういった場で彼女たちが参加するか否かを決めるのは正后であり、またいずれかはその時々で、今日は参加しない場であったらしいと、ただそれだけの話だった。
なんとなくよかった、そう思う。
公主は正后と四貴妃がそれぞれ一人ずつ成していて、つまりは五人、この後宮で生活している。
必然小美よりも皆年下であり、一番下となる朱貴妃の生んだ公主はまだ年齢としても一桁であったはずだ。
現皇帝の子女の一番上は皇太子でつまり翔兄のことである。
その翔兄でさえ小美とは3つしか違わないのだ。ある意味では当然のことと言えたことだろう。
もっとも、一番上の公主とだと、小美は2つと違わないのだけれど。
それは他でもない蒼貴妃の生んだ公主だった。
だからだろうか。
自分の娘と年が近いから。
蒼貴妃が小美に柔らかく接するのはそういった理由もあるのかもしれなかった。
※公主=姫。皇女。皇帝の娘。ここでは正后及び四貴妃の生んだ娘のみ公主と称されます。妃以下の生んだ娘は皇女。公主>皇女です。ただし作中時点の後宮には存在していません。男子の場合は単純に皇子。「公主」に対応させるなら「王」とした方が適切かもしれませんが流石にややこしすぎるので皇子とします。また、年齢は加味されず、封じたりなどなく生まれた時から公主と称されているとします。単純に「姫」とかそんな意味だと解釈して頂いてOKです。
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