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33・重い気持ち①
しおりを挟む変化というものは、どうやら起きるとなれば立て続けに起こるものらしい。
そう小美が思い知ったのは、この日、いつもは参加しないで済んでいる、妃嬪たちとの午餐の場へと参加せざるを得なくなってからのことだった。
それというのもいつものように朝食を摂りに行った棗央宮で正后が、常ならば強くは誘わない午餐の場への参加を、にっこりと微笑みながら、だけど半ば強要してきたからである。
曰く、
「小美も傍付きが増えたのだから、今日は紹介がてら皆との午餐に参加しなさいね」
とのこと。
いかに口調が柔らかくとも、その言葉は断定で命令だ。
新しい傍付き、つまり瑞を伴えということなのだろう。
正しく瑞のもたらした変化だった。
小美はうんざりした気持ちで、だけど正后には否とも言えず。
「はい……謹んで参加いたします……」
そう応えるより他になかった。
涼は何も言わず、変わらず後ろに控えている。
皆が集う午餐の場への参加は涼が否を唱えるものではないらしい。
わかっていたことだ、そもそも涼は小美が、他の妃嬪たちとほとんど交流を持とうとしないことをよいこととは思っていない風だったのである。
ただ、かと言って小美に、何かを強制したりだとかなどをしたことはないのだけれど。
午餐というからには行われるのは昼食時。
常ならばそう言った日は、小美は一人、自分の宮で昼食を済ませるのだけれど、今日ばかりはそうはいかないのだろう。
なんとも重苦しい気持ちで棗央宮を後にした。
とりあえずと自分の宮へと戻る道すがら、隠しもせず溜め息を吐く。
幸い、そう言った小美の様子を見咎めるような誰かとも会わず、辺りにいるのは後ろに付いてくれている涼と瑞のみ。
彼らは男性というのもあるのか、どうやらおしゃべりな性質というわけではないらしく、あるいは自身の立場などをようよう理解しているのだろう、不用意に話しかけてきたりなどしてこなかった。
皆との午餐の場に参加するのは当然のことながら圧倒的に女性が多い。
それでなくともここは後宮。
宮人は基本的には女性ばかりで、男性の姿はひどくまばらだ。
そんな中で、なのに小美の側にいるのは男性である二人だけ。
普段は気にしない沈黙が、今はなぜだか気になってしまう。
否、むしろ誰か、誰でも言い、姦しい話でも聞いて気を紛らわせたい気分だった。
とは言え、現状、涼以外に宮人などが傍にいないのは他でもない小美が望んだからこそ。
宮を賜った初めの頃、気を使った正后や、移動を申し出た、それまで小美を気にかけてくれていた棗央宮の者を断ったのは小美自身だ。
意地を張った部分がなかったとは言えない。
だけど棗央宮の者は元より皆正后に仕える者に違いなく、忠心を変えさせるのは忍びないと思ったのもあったし、その時にはすでに小美自身、自分の立場を理解していたが故のことだった。
なのにこんな時ばかりはそれを惜しむ。
小美は幾度目か、溜め息を吐くより他にないのだった。
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