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25・いつかの夜①
しおりを挟む翔兄と小美は小美が2歳、翔兄が5歳の時より、兄妹のようにして育ってきた。
年の差は三つ。それこそ、翔兄が12歳で学院に通い始める前までは、勉強も鍛錬も何もかもそれこそ本当にべったりと常に一緒というありさまだった。
だが、そこから更に数年。小美が、翔兄が後宮を出た年に追いついてき始めたぐらいから、翔兄の足は徐々に後宮から遠のき始めた。
まるで何かに葛藤するかのように、何くれとなく理由をつけて、後宮を訪れる頻度が減っていく。
終いには、昼にはまったく寄り付かなくなるのにさほどの時間はかからず、小美はどうしてなのか、何もわからないまま、寂しい時間を過ごすこととなった。
特に同じ頃、小美は自分の宮を賜って棗央宮から出ることとなり、余計に孤独が小美を苛んでいく。だが。
「小美」
どうしてか。昼に訪れない代わり、翔兄は夜も更けてから、小美を訪ねてくるようになったのである。
「翔兄! どうなさったのですか? 今日はこちらに来るようなご連絡など、何も下さっておられなかったかと存じますが?」
夜中に突然現れた翔兄を、しかし久しぶりに会う小美は弾んだ声で歓迎した。
もうすっかり寝支度も整えて、後は寝台に横になるばかりとなっていたはしたない寝間着姿を躊躇いなく晒す。
恥ずかしいだなんて思わなかった。
それこそ今更だ。今よりもっと小さい時には、一緒に寝たことさえあるのだから、寝間着姿ぐらいなんだというのか。それよりも、数週間ぶりに会えたのが嬉しくて堪らなかった。
だが、そんな小美の姿に一瞬たじろいだように見えた翔兄は、しかし次の瞬間にはそんなことまるでなかったかのように、いつも通りの顔で微笑んで、小美に優しく微笑みかけたのだった。
「ひどいなぁ、小美。連絡をしないと来てはいけないのかい?」
本来なら、事前の連絡もなく、他者の宮を訪れるなど大変な無礼に当たる。
皇帝が閨へと訪れる時でさえ、事前に伝令が届くほどなのだ。
だけど翔兄はそんなものを全部すっ飛ばして、小美のいる明桃宮へと、本当に突然、姿を現した。
その上でそんなことを平気な顔をして宣う。
ここにもし小美以外がいたならば。それが誰であっても、咎められてしかるべき態度だった。
だが、今、この場には小美しかおらず、そんな風に翔兄がからかうように詰ってきても、まったく何も不快には思わない。
「まぁ、翔兄ったら! そんなこと、あるわけありませんわ。妾は翔兄のお顔が見れるだけで、これ以上ないほど嬉しく思うのですもの」
にこにこと可愛らしく笑うばかりの幼い小美に、翔兄もまた笑い返して。
「小美」
そっと、手の中に納まるほど小さな体を、大切に大切に抱きしめた。
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