【完結】後宮の秘姫は知らぬ間に、年上の義息子の手で花ひらく

愛早さくら

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22・小美の出自

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バイ?! まさか噂のっ」

 おそらく、今朝、紅嬪も言っていた噂のことだろう。
 ルイはにこと微笑んだようだった。

「当家筋ではございませんよ。ですが私の入宮は、勿論当主様もご存じでいらっしゃいます。明妃様は白家御当主の唯一のご息女でございます。嫡出子とされている・・・・・・・・・のは明妃様ただお一人。私が明妃様付きとなりますのも、当然でございましょう」

 そんな瑞の言葉に、妃嬪が真っ青な顔をして一歩後退る。瑞が告げたのは今更な事実・・だった。それだけでどうしてこれほどまでに狼狽えるのか。小美シャオメイにはさっぱり理解できない。
 だが、あるいは彼女たちは失念していたのかもしれないとも思う。小美の立場というものを。血筋だけを見るならば、白貴妃となっていても何らおかしくないものなのだ。
 入宮した年齢が幼すぎて、その代わりに立ったのが今の白貴妃であり、そのまま、結局終ぞ小美がその地位に戻る・・ことなく今に至っているだけで。
 おまけに誰の意向なのか、棗央宮を出て、宮を頂いてからこちら、涼が来るまで小美には専属となる宮人がつけられていなかった。宮人にまで軽んじられている幼い妃。そんな事実が彼女たちの目を曇らせていたのかもしれない。本来の小美の生家を忘れてしまうぐらいに。
 小美は今度は堪えることなく溜め息を吐いた。
 そうすることで、慄くばかりで何も言えなくなっている嬪の注意を引く。

「瑞の言うとおり、彼らの采配は陛下のご意向です。妾にはどうにもできませんわ。これ以上のお話がないようでしたら、もう行ってよろしいかしら?」

 ほとりと首を傾げて確かめると、嬪は壊れた人形か何かのようにこくこくと取れそうなほど首を縦に振って応え、だから小美はにっこりと微笑んで。

「それでは、妾は失礼させて頂きますわね」

 そんな挨拶と共に自分の宮に向かって歩き始めたのだった。
 涼と瑞は当然のように付き従う。
 涼の雰囲気がどうにも尖っていて、どうやら彼にとっては面白くないことばかりだったようだと小美にはため息を吐く。
 瑞は辿り着いた明桃宮の前で拱手し、

「では、私はこれで。また、明日朝、こちらまでお迎えに上がります。どうぞごゆるりとお休みください」

 今日はこれで辞すと挨拶を寄越す。瑞の視線が一瞬、涼の方へと流された。
 その意味さえ分からないまま、つまりこの後、小美は気が重いことに、涼と二人で宮に戻らねばならないのだった。
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