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13・新しい妃妾
しおりを挟むちなみに紅嬪はこれでいてそれほど小美と年が変わらない。精々が3つ。
つまり、実は翔兄と同じ年だった。
だからこそ子供だ子供だと言われているのだけれど。
涼は口を挟まず、まるでいないかのように気配を消し、小美の後ろに控えている。
対して紅嬪は一人である。
取り巻きも宮人も誰も連れていないのはそう言えば珍しいなと小美は思った。
いつもは最低でも3、4人で行動しているようなので。
何かあるのだろうかとふと思う。わざわざ小美に嫌味を言いに来た、だけではまさかないはずだ。否、紅嬪ならそれもあり得るのだけれど。
内心うんざりしながらも、邪気のない笑顔を崩さない小美を見て、いったい何を思ったのか、紅嬪はややあって思いっきり顔をしかめて溜め息を吐いた。
溜め息を吐きたいのは小美の方だったが、小美はあくまで見た目には素知らぬ顔で、むしろどうしたのかと気づかわしげな雰囲気を出して小さく首を傾げる。
「紅嬪様? どうかなさったのですか?」
ついでにわざとらしく尋ねてあげた。
苦い顔のままに紅嬪は幾度か首を横に振って、艶やかに赤く、紅を塗りたくった唇を開く。おもむろに。
「いいえ、それほどまでに正后陛下と仲が宜しいようですのに、どうやら明妃様はまだご存じでないようですから」
「何のお話です?」
心当たりなどなく、小美が今度は心のままに怪訝な顔をする。
本当に全く何も知らない様子の小美に、今度は紅嬪は自身を優位だと思いでもしたのか、しかめていた顔を戻して、にしゃりと口の両端を釣り上げた。
「正后陛下ならきっとご存じですのに、陛下は明妃様にそのようなお話をなさらないんですのね」
仲がいいと言っても所詮その程度なのかと、馬鹿に仕切った心根が透けて見えそうな口調である。
美しい顔をしているはずなのに、笑顔が醜悪だなんていったいどういうことだろうかと小美は思いながら実際に何も知らないので、紅嬪が更に口を開くのを待った。
これまでを考えると、おそらく紅嬪はここで口を噤んだりしないはず。
案の定、伏せたり焦らしたりすることなく、紅嬪はすんなりと話を続けた。
「わたくし、てっきり明妃様はもうご存じだと思っておりましたわ。だって他でもない白家のお話ですもの。なんでも新たにお一人、妃妾を後宮にお迎えするのですって。明妃様と同じ年の方だと窺っておりますわ。あるいは皇太子殿下にこそと薦められるための方かもしれませんわねぇ」
そして、紅嬪の狙い通り、彼女の語った話は、小美を動揺させるに十分なものなのだった。
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