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12・嫉妬と嫌味
しおりを挟む紅嬪は明確に小美を嫌っている妃妾の一人だ。
皇帝は実は正后以外はほとんどお召しになることがなく、四貴妃でさえ、子を成してから後はほとんど放置されているような有り様だった。
なので小美が一度も皇帝に召されたことがないからと言って、馬鹿にされるいわれは本来ならない。
ならばなぜ、小美ばかりがつらく当たられることがあるのか。
簡単に言うならば嫉妬である。
小美自身は全く理解していないが、実の所、小美は5人いる皇女よりもよほど皇帝に可愛がられていた。
皇帝のみならず正后までもが小美の味方だ。
つまり存在するだけで目立つのである。
目立つ者はどうしても攻撃の対象となりやすい。
実際に皇帝に召されたことのある四貴妃や正后には決して向けられない矛先が、小美ならと向けられることがあった。
小美としては迷惑な話だったし、だからこそ小美は目立ちたくもなかったのだが、それは土台無理というもの。
何分、今身に着けている衣装一つとっても、小美と紅嬪では差があるのである。
妃と嬪という身分の差はあれど、皇帝に召されたことがないという点においては同じ。にもかかわらずなぜ小美ばかりが優遇されているのか。
幼い頃から後宮にいる、白家当主、唯一の嫡出子でありながら白貴妃にも成れていない小娘であるのに。
今の白貴妃は白家の傍流の娘で小美よりもよほど後宮に入ったのが遅かった。にもかかわらず小美はついぞ今日まで一度として貴妃には立たず、昇格も降格もない明妃のまま。
成熟した美貌で皇帝を篭絡しようと後宮へ入ってきた紅嬪からすると、目障りなことこの上なかったのである。
それこそ、用もないはずなのにわざわざこんな所で小美を待ち伏せし、嫌味の一つも言いに来たくなるぐらいには。
「明妃様はまた、本日もお可愛らしい衣装を身に纏っていらっしゃるのね。それも両陛下のどちらかからの贈り物であるのかしら」
頬と笑っていない目で着ている服を褒められる。
なお、この女性のお可愛らしいは全て子供っぽいと変換して構わない。
紅嬪の言うとおり、実年齢を考えると、可愛らしすぎる色合いの衣装であるのは確かだった。
「ええ、そうなのです。先日正后陛下より賜りましたの。よく似合っているでしょう?」
小美はひとまず、嫌味になど気付いていないふりをして言葉を返した。
嘘は一つも言っていない。実際によく似合っている。
「まぁ、正后陛下が。相変わらず明妃様は可愛がられてらっしゃるのね。まだお食事は棗央宮でとっていらっしゃるのでしょう? 仲がよろしくて羨ましいこと」
早く一人立ちして食事ぐらい一人で摂れと言いたいのだろうか。あまりに実のない会話の応酬に、すでに小美は疲れ始めていた。
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