9 / 96
7・遅い成長と髪と目の色
しおりを挟む小美は成長が遅かった。
二十を超えてなお、否、ほんの半年と少し前まで小美はどう多めに見積もっても、12か13ぐらいにしか見えない、子供のような見た目をしていたのである。
勿論、頭脳や教育までが幼かったわけではなく、あくまでも見た目のみではあったのだが。
いや、もしかしたら情緒面、心理的なものが作用していたのかもしれない。
なにせその時まで小美は、大人になどなりたくない、出来るだけ子供のままでいたいと願っていたので。正しくは、周囲にそう望まれていると考えていた。
幼く、可愛らしいままでいれば、誰の脅威にもなり得ない。
皇帝の渡りが一度もないことだって、幼いからだと言い訳が立った。
親というものは子供に、いつまでも子供のままでいて欲しいと願うことがある。
それは皇帝と正后もそうで、可愛い可愛いと、可愛がることを出来る分だけ可愛がってくれた。
小美よりいくつか年下であった両陛下の実子である皇女が、見た目だけなら小美を抜かしていってさえそうで。
否、だからだろうか。
「まったく。あの子たちときたら、もう育ち切ってしまって、かわいくないばかりなのよ。その点、小美はいつまでも幼くて」
正后がそう、小美をほめそやす度、それらは呪いのように、小美の上へと降り積もっていったのかもしれない。
とにかく、小美の見た目はいつまでも幼いまま育たず、それでいいと、小美本人も周囲もまた、考えていたのである。だけど。
少女だっていつまでも子供ではいられない。
自分の恋心を自覚したのならばなおさらだ。
小美が見た翔兄と朱貴妃は、本当によく似合っていた。
翔兄は青い髪と琥珀色の瞳をしている。
琥珀色、つまり輝かんばかりの金色の瞳は、皇族によく現れる色で、歴代皇帝の大部分はこの色の瞳を持っていた。とは言え、もちろん、皇族以外に同じ瞳の色の者が出る場合はあり、それは主に、皇族が過去降嫁したことの多い四家の者がほとんどで、白家出身の小美も、実は同じ色の瞳を持っている。
皇家に多い琥珀色だ。
その所為で小美は本当に幼い頃、確か5歳になる頃ぐらいまでは、自身は正しく翔兄の同父母兄妹だと認識していた。それが間違いだったと知ったのは、さて何がきっかけだったことか。それはともかく。
朱貴妃は赤髪に赤い目をしている。
赤は朱家によく出る色合いだった。
とは言え、もちろん、瞳はともかく髪に関しては、深く、暗く艶やかな色で、鮮やかな赤髪というわけではない。それは勿論、翔兄も同じで、濃く、闇に近い青い髪なのである。
ここ、華国では黒に近い髪色で、なのに魔力を豊富に持っているというのが、尊ばれる特徴だった。
本来魔力は多ければ多いほど、髪や瞳の色が薄まる。反対に、魔力が少ない分だけ、それぞれの色が黒に近づいた。
そんな摂理に反する存在であること。それが華国では尊ばれるのだ。
反して、小美の髪は、白髪のような銀色なのだった。
5
お気に入りに追加
197
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる