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3・王宮にて

*3-11・奥までぜんぶ

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 ティアリィの声に、苦痛は混じっていなかったと思う。
 だけどこの時、僕は、初めて感じた気持ちよさに、どうしようもなく眩んでいて。

「ぅっ……、ぁっ、」

 すぐにでも吐き出してしまいそうなのを奥歯でくいしばって堪え、ゆっくりと腰を動かし始めた。
 押して、引いて、小刻みに。また押して。

「ぁっ、ぁっ、ぁっ、ぁっ、ん、はぁっ……ふぁっ、」

 少しずつ、少しずつ、ティアリィの体の奥深くまで進んでいく。気持ちよかった。僕自身をティアリィの腹の中で擦っているかのような刺激が、今まで何度も想像しながら自身の手指で握ったそれなど、比べ物にならないぐらいに気持ちよかった。
 ああ、なんてことだ。
 もっと早く、強く。もっと奥まで。そうしたいのを耐えて、耐えて、努めてゆっくりと腰を揺らす。
 僕の動きに合わせて上がるティアリィの声が甘くて。甘くて。まるで天上の調べのよう、耳に心地いい。
 焼ききれそうな理性をかき集めて、注意深くティアリィの声に聞き惚れた。その中でも、ひときわ反応のいい場所があると、その場所を意図して重点的に刺激して。そうするとますますティアリィの声は、高く、甘く辺りに響き渡っていく。

「あ! あっ!」
「ティア、リィっ……」

 息が詰まった。僕の声も、揺れている。
 ああ、ティアリィ。

「ぁっ、ぁっ、ぁっ、あ!」

 押して、引いて、押して。ぐちゃぐちゃと濡れた音を立てながら腰を動かす。彼の腹の中を強く擦る。ティアリィの甘い声と、下肢から感じる快楽が、僕の頭を満たしていった。
 ティアリィ。

「ぁっ、ぁあっ……」

 喉を仰け反らせながら、体を震わせて。ティアリィが達したようだった。すでにティアリィのそれ・・はぐたりと力をなくして、だらだらと先端から、早々に白さのなくなった体液を溢れさせているのみ。中でだけ、達しているのだろう。
 同時に、僕自身がきつく引き絞るよう締め付けられて。

「ティアリィっ……、ぅっ……」

 振り切るように、腰を揺らす。はぁはぁ吐息を荒げて、何度も、何度も彼の名を呼んで。そして。

「うっ、くっ……」

 吐き出した。ティアリィの中に。体液と共に、魔力を注いだ。だけど足りない。こんなもので、足りるはずがない。もっと。もっとだ。
 僕はまだティアリィの中に、全部、入り切れてさえいなかった。

「ぁっ、ぁああっ……!」

 ティアリィが、火照った体をくねらせて、身悶えている。快感だけを、きっと感じてくれている。ああ、気持ちいい、気持ちいいよ。だけどもう少し。もう少し。
 達しても腰の動きなど止められず、彼を揺さぶり続けた。上体を倒して、もっと、更にと体を密着させる。触れ合った肌と肌が汗で滑った。生々しい感触まで気持ちいい。ティアリィの耳に唇を寄せて囁く。

「ティア、リィ……ねぇ、ティアリィ」

 足りない。足りないんだ。だから。

「ねぇっ、ぅっ……最後まで、全部。……いいでしょう?」

 僕を全部、受け入れて。まだ僕は全部を。君の中に、納めきれてはいないから。
 ティアリィの足を抱え直して、体を捕らえ、ぐっと、更に腰を押し付けた。何度か押して、引いて、勢いをつけていく。ティアリィの腹の中はすでに僕でいっぱいで行き止まりのような部分まで届いているのだけれど、更に先があることを、僕は知っていた。勿論、座学で。

「えっ……? ぁっ! ぇっ、ぅっ……ぁあっ! やぁっ…!」

 意図してなんとか彼の体に魔力を流し、きつい抵抗のある最奥が綻ぶように誘う。結腸と呼ばれているそこを抜けないと、僕の全部なんて入らないから。少し無理をさせることになるけど、痛くはないはず。多分、負荷がかかってしまうだろうその部分は後で必ず治すから、今は。
 戸惑うティアリィに構わず腰を進めて、ゆっくりとその奥を開いていく。だけどまだ、まだだ。

「ぁっ、ぁあっ……!」

 震えるティアリィの体を捕らえるように抱きしめて、更に腰を揺らして進んでいった。ずりずり、ぬちゅぬちゅ、卑猥な音が下肢から絶え間なく響いている。まだ、もう少し。流石にそう簡単には開かない其処を何度も突いて刺激して。

「ティアリィ」
「ぁっ、ぁっ、ぁあぁああっ……!」

 僕の動きに、ティアリィの声がこれまで以上に大きくなる。まるで悲鳴のよう。だけど確かに悦楽に塗れて。
 ティアリィの腹の中に僕がぎゅうぎゅう締め付けられ、気持ちよくてたまらない。ああ、早く、全部、全部。
 ごちゅごちゅと激しく突いた。其処が、早く綻んでくれるように刺激でもって導いていく。やがて。
 ティアリィの足を掴んだままの手に、知らず力が籠る。これまでで一番の勢いをつけて。

「ぐっ、がっ……ぁっ……、……っっ!!」

 ぐぽっ、僕自身の先端が、何かを抜けた感触がした。同時に、きつい締め付けがその部分に。ああ。頭の中で何かが明滅しているかのような快感だ。気持ちいい。そして僕の全部が、彼の中に。
 バツ、と、湿った音と共に肌が当たった。
 ティアリィの体がこれまでで一番大きな反応を見せて。ああ、全部。やっと全部。
 僕は夢中になってこれまで以上に腰を揺らす。
 ティアリィ、ティアリィ、ティアリィ。
 僕の頭はそれだけに支配されて、気持ちよくて、気持ちよくて。
 途中からティアリィの反応が鈍くなっているのにも構わず、僕はそのまま長いこと。ティアリィの体に溺れ続けたのだった。
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