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2・学園でのこと

2-18・実を結んだ僕の作意

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 ルーファ嬢からの提案は、ただし、僕にとって都合がいいことには何処までも変わりなく。だから、僕は今度こそ違えず同意した。そもそも、話の途中から予想できなくもなかったし。

「いいんじゃないかな」

 僕の返事に、ルーファ嬢がぱぁっと顔を輝かせる。

「よかった! 安心いたしましたわ。殿下にはお話ししておかなければと思っておりましたの」

 流石に卒業記念パーティーを騒がせてしまうことそのものが、あまりよくはない、程度の認識なら彼女にもあったらしい。
 今日の相談、というのもそれだったのだろう。
 僕は頷く。

「ああ、でも、ちゃんと事前にご両親にもお話しておいた方がいいと思うよ。勿論、アルフェスにもね」
「ええ、アルフェス様には、すでにお話いたしておりますわ」
「そう。ならよかった」

 絶対にアルフェスは賛同していないと思うけれど。にもかかわらず現状でルーファ嬢を少しも止められていないのだろう。それとも最後の最後でティアリィが何とかしてくれるとでも思っているのか。否、それを夢見ている、とかならありえそうだった。
 おそらく。彼女の両親では、ルーファ嬢を止めきれない。その上、アルフェスにも僕にも話していることを両親にも伝えるといいよと、助言・・もしておく。そうしておけば最終的に、彼女の両親も頷くはずだ。
 機嫌のいい僕の前でルーファ嬢もまた、安心したのだろう、穏やかに微笑んでいる。
 僕にとっては少々取り扱いにくい幼なじみだけれど。こういう顔は本当にティアリィに似ていてかわいらしいなと、僕はしみじみと思ったのだった。

 例えルーファ嬢の中に、決してアルフェスへの恋心などがないことが分かっていても。おそらくティアリィは、この提案に頷くだろう。アルフェスとの婚約解消は、彼の希望にも沿うからだ。
 これは決して、ティアリィからの婚約破棄、あるいは解消ではない。
 むしろ、この提案を事前に知っているアルフェスがルーファ嬢を止めきれなかった時点で、アルフェス側からの破棄、あるいは解消だと言えるだろう。
 つまり、僕がティアリィへと求婚することを妨げる理由が何もなくなるということだ。
 内心で浮かれながら僕はその後、この話を僕の家族やアツコ、更にアルフェスの両親にも伝えた。
 父は頭を抱えて首を横に振り、しかし最後にはため息とともに頷いて。母は困ったように笑っていた。もっとも、以前の言質もあり、彼らには僕を止められないのだけれど。ルーファ嬢のことなど、もっとさらに止められやしないだろう。
 アツコには呆れた顔をされ、アルフェスの両親は、最初は戸惑っていたけれど、ルーファ嬢そのものを拒絶する気持ちがあるわけではないようで、アルフェスのティアリィへの好意を知っていたが故のものだったようだ。それも、ティアリィとアルフェスの事情・・も一緒に伝えれば、仕方がないとの納得と共に、何とも言えない顔をしていた。
 事情・・が事情ゆえ、ティアリィがルーファ嬢へと変わった所で、問題が解消されるとは思いづらいのだが、それでも少なくともあのルーファ嬢の様子を見る限り、ティアリィより何とかなる可能性があるのではないかとも思う。
 それは僕だけではなく、周り皆が同じで、一番納得しがたいという顔をしていたのは迷い人であり、この世界の都合に馴染みきれていないアツコだった。
 だが、聡明な彼女はやはり、明確に何か行動を起こすということをしない。
 全てが順調に進み、僕の作意の中で迎えることとなった卒業記念パーティーは、僕にとってこれ以上ないほどに楽しいものとなる。
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