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36・レシアについて④
しおりを挟む婚約者と疎遠になっていることについても、グローディが問題ないと言い切ったため、特に気にすることさえなかったようで。婚約者の少女はレシアの弟と、より親密になっていっていた。
対して、レシアの近くには一人の少女が現れるようになる。
ビュティネア・デナフォという、元平民の男爵家の養女で、どうもレシアは気付いていなかったようだが、思い出す限り、どう考えてもビュティネア嬢はレシアに対し、あからさまなほど好意を寄せていた。
しかしレシアはグローディが促す通りに彼女と接していて、それが彼女からの好意を利用するかのような行為であることに一切気付かず、ビュティネア嬢とグローディの言葉に従い、ついには学園の卒業式にて、一方的に婚約者の少女へ、婚約破棄を告げるに至ったようだった。
まるでマンガやゲーム、小説のようなお粗末な断罪劇。
おまけに国外追放となったのはレシアの方だったのである。
思い出す度に頭痛がしてきそうなほどレシアの言動は軽率で。グローディはそれらを一切止めず、むしろ促すかのように笑みを浮かべていた。
何をどれだけ考えても、この記憶では、明らかにグローディの作意が働いていたとしか思えない。
元々出会う前からレシアに婚約者がいたこと自体、グローディは面白く思っていなかっただろうから。
卒業式という場での軽率な言動の罰として、レシアに与えられた国外追放という処断さえも、おそらくはグローディの意思が絡んでいる。
レシアの両親はどうにもレシアのことを扱い兼ねてはいたようだが、ちゃんと、子供として愛情を注いでくれてはいたようなので。なにぶん、それを、国外追放などと称して、レシアが納得する形で国外へ追いやるなど、思い出す限り不自然極まりないのだ。
現に追放を言い渡されたレシアを、グローディは嬉々としてナウラティスに連れ帰っている。
レシアはレシアで、
「お前が言うのなら問題ないな!」
などと言っていた。
問題しかないだろうに。レシアはとにかく周囲の言葉を何でもかんでも鵜呑みにし過ぎなのだ。
こうしてレシアのことを整理して改めて考えてみても、やはり俺はレシアには成れそうもないということしかわからない。
なお思い出せている記憶は主にレシアがここ、ナウラティスに来るまでのものが多く、子供が出来てから以降のことはわからないまま。実の所、教えられていない2番目から8番目までの子供の名前さえ、俺はいまだに知らないままなのである。
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