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34・受け取れない献身

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 レシアにならなければ・・・・・・・・・・
 けど、わかっていてあんな対応など、俺には取れない。

「レシア様。何がお悩みがあるのでしたら、ぜひ私におっしゃってください」

 見るからに落ち込んでしまっていたからだろう。グローディが俺の手を取ってそんなことを切々と訴えてきた。
 俺はブローディをぼんやりと見つめた。
 キレイな顔をしている。美形というのだろうか。とは言え、女性的な所など少しもなく、男らしい雄々しさにあふれている。ため息が出るほどのイケメンで美丈夫だ。
 俺、否、レシア・・・は背があまり高くないようで、長身のグローディとは頭一つ分以上の差がある。決して大柄ではなく、細身のティアリィさんでさえ、レシアよりよほど背が高かった。
 ティアリィさんのパートナーである前皇帝陛下も、グローディと同じか、少し低いぐらいだったと記憶しているから、レシアの周りで、レシアほど背の低い男性はどうやらいなかったようだった。
 レシアは女性並みに小柄なのだ。
 そんな見た目だけなら美少年なレシアと並ぶと、きっとグローディとだと誂えたような一対に見えるのだろう。美少年と美男子でお似合い・・・・だ。
 何もかも、存在そのものがレシアの為にあるかのようなグローディ。
 こんなにかっこよくて、キレイで。そしてレシア・・・を愛している。
 記憶の中で。レシアは大切にされていた。
 グローディに真綿のようにくるまれ、囲われ、鏡に映るレシアの顔はいつも満ち足りて幸福そうで。
 グローディは俺のことも同じように扱う。大切に、大切にそっと触れて、尽くして。
 夜に触れられる時は少し強引だけれど、それだって注意深く俺の様子を窺って、快楽を引き出すのに苦心しているように思えた。
 気持ちいいことだけを、俺が感じていられるように。
 素晴らしい、男なのだ。
 少々、いや、かなりレシアに対しては過保護が過ぎるようだけれど、それもレシアを思ってこそ。レシアとしての実感がどうしても持てない俺のこともレシアとして扱って、慈しんでくれている。
 だからこそ俺は、言えなかった。
 グローディにだけは、言えなかった。だから。
 俺は首を横に振る。グローディをそっと見上げて、でもすぐに目を伏せた。

「ううん、なんにも。悩みなんてないんです、ただ、俺、何も覚えてなくて……たくさん、思い出せたこともあるんですけど、でも……」

 どうしても、以前のレシアが遠い。
 それが気にかかっているというのは嘘ではなかった。
 でも全てではない。
 グローディはふっと柔らかく息を吐いて、取った俺の手をぎゅっと握った。
 あたたかいグローディの手。
 そうして初めて自分の指先が、緊張ゆえか少し冷えていたことに気付く。
 緊張。していたのだろう、俺は知らず、いつの間にか。
 そんな俺の変化に、俺自身より先にグローディが気付いている。
 だからこそなのだろう、グローディは俺を安心させるように柔らかく微笑んでいた。

「そのうち、そう言った違和感は気にならなくなりますよ、レシア様。お気になさらなくてよろしいのです。ただ、レシア様は心安らかにお過ごしくださればいい。私がおります。全て・・私にお任せください」

 グローディは誠実に俺に言い募った。
 その瞳に宿る愛しさこそが。俺をますます追い詰めるのだと、そんなことには気づかないままに。
 俺は曖昧に頷いて微笑んだ。
 そうするしか、出来なかった。
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