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40・夢うつつ①
しおりを挟む―まさかこんなことになるなんて。
―妨害が入る可能性はわかっていたことだろう。自制できなかったお前が悪い。
―返す言葉もないな。だが、言い訳に聞こえるかもしれないが、あの時、俺の意識は強い干渉を受けていたんだ。
―それこそ言い訳だな。そんなもの跳ね返してこそだろう。……――それで、今は?
―今は気配が遠い。それはお前も同じなんじゃないか?
―……まだこの界を見つけられていないのかもしれない。とは言え、時間の問題だとは思う。直にフォルとネアも渡ってくる。それは同時にあの男も、ということだ。
―厄介だな。神人なんて、対抗する術がない。
―仕方がない。デュニナの番はあの男なんだ。それを覆すには……――。
話し声が聞こえた。
夢うつつ。
ホセとシズの声。
いったい何を話しているのだろう。
否、ホセは今、獣となっていたはずだ。話していたということは人型に戻れたのだろうか。それともあの獣のままでも話せるのか。
ならば何故、僕とは話してくれなかったのだろう。
話している内容は、やはりどこまでもわからないことばかりだった。
あの男だとか番だとか。
つまり僕の番のことを、彼らは知っているということなのだろうか。
そして番もまた僕を、きっと探している。
それだけが僕に確信できて、でも他は何もわからなくて。
思い出す。
目が覚めた時、ホセは獣となっていたから意識が逸れていたが、そう言えばこの森へと落ちて来る直前、僕はホセに襲われたのではなかっただろうか。
だから僕はホセから逃げて、そして。
あれはいったい何だったのだろう。
なぜ、ホセは急にあんなことを。あの時のホセは、なんだかいつもと違っていた。目の色だってそう、確かに紫に輝いていて。
瞳孔を縁取る金の輝き。あの、目の色は僕の番の……――。
意識が揺蕩う。
今、自分が考えていたことさえ分からなくなっていく。
掴みかけた思考の欠片を見失う。
先程、耳にしたはずの誰かの会話も。
全ては微睡みの中に溶けて。
そしてゆらり、沈んでいった。
深い眠りの縁へと、まるで誘われるかのように。
僕の意識ごと、ゆっくりと、ゆっくりと。
だから、僕は。
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