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35・金色の獣①
しおりを挟む当然、はじめて見る獣だ。
いったい何の獣なのだろう。これは。
「…………おおか、み……?」
とても大きい。
僕をすっぱり包み込んでくれていた。
通常の何倍もの大きさの、だが、こちらをまっすぐと見つめてくる澄んだ眼差しを宿した目、耳や鼻の形、あるいは太く長い尻尾などから見ても、とても大きな狼か何かに見えた。
少なくともそう見える形をしている。
とても大きいけれども。
毛は柔らかくもふっとしていた。触れている所から感じる限り、とても手触りがいい。
そしてその、金色の毛を持つ巨大な狼らしき獣は僕を囲うように寝そべっているようなのである。
状況が全くわからない。
いったい何がどうなって、僕は獣に包まれているのだろう。
そもそもここはどこなのか。
今度はゆっくりと体を起こす。
獣はただ、僕を注意深く窺っているようだった。
改めて見てみても、やはり獣は狼に見える。
ただ、とても大きな狼。
次いでやはりゆっくりと辺りを見回してみた。
狼の金色の毛並みに視界が奪されていたせいで、周囲の様子さえ分からない。
ようやく目に出来た、そこにあったのは樹々だ。
生い茂った濃い緑。
「……森?」
勿論、見覚えなんてまるでない場所だった。
呟く僕からオオカミは視線を逸らさない。
緑が勝った青い瞳。
(……――緑がかった、青い瞳?)
その目の色に見覚えがあった。
否、意識を失う前、落ちる寸前に見たばかり。
こちらへと必死に手を伸ばす、泣きそうな眼差し。
それはこのような色をしていなかっただろうか。
「え?」
どくりと大きく鼓動が脈打った。
まさか、そう思う。
だけど。
フォルは竜だ。
なら、他は。他の者も人間ではない可能性は充分にある。
現にネアは巨人で。
何より、眼差しが。
僕を、とても気遣わしげに見ているそれが。どうしても同じにしか見えなくて。
思い至って、驚きに目が大きく見開かれたのだろうことを自覚した。
「ホセ、さん…………?」
ぽつり、思い浮かんだ名を呟くと、獣はわふん、まるで頷くように、小さく首を縦に動かしたのだった。
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