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*33・幸福な微睡み
しおりを挟む水音がしていた。
ぴちゅぴちゅ、ぱちゅぱちゅと。
密やかに広がる淫靡な気配。
―あっ、あっ、あっ。
僕は小さく喘ぎながら、快楽に泣いていた。
―デュニナ。
僕に激しく腰を打ち付けながら、大切に僕の名前を呼ぶ。
―ぁあっ!
辺りにはとてもいい匂いが漂っていて、僕はそれに酔いしれるように浸りきっていた。
幸せで、幸せで、幸せで。
―ああ、デュニナ……くっ、
小さなうめき声が聞こえたかと思うと、ひと際ぎゅっと抱きしめられ、途端ドクンドクンとお腹の中、奥深くへと注ぎこまれる熱。
同時にじわっと広がったのは魔力。
―ああ……。
お腹の中が、喜んでいるのがわかる。……の魔力でいっぱいに満ちて。
―ああ、よく馴染んでいるね。順調なようだ。
どこか安堵したような声に、ようやく息が上がり切ったままの僕も微笑んだ。
―うん、良かった。
大切にお腹を擦る。
まだ、奥深くまで大きく逞しいそれを抱え込んだままのお腹。でも、僕のお腹の中にあるのはそれだけではない。
―ようやく定着してきたようだ。デュニナ。さぁ、もう一度。
あたたかい腕が、僕をまたぎゅっと抱きしめる。
僕はうっとりと夢見るよう、当たり前にそれに頷いた。
―うん、僕も、まだ。
まだ足りない。
さて、足りないのは果たして僕だったのか、それとも。
そう、お互いの意志を確かめ合ってすぐ、また緩やかに、しかし情熱的に動き出した腰、再び襲いかかってきた快感。
―ぁっ、あっ! あっ、ぁあっ!
僕は変わらず甘い声を上げながら、だけどどこまでも満ち足りて幸福だった。
僕を蕩けさせる、番の匂いに包まれて。
―……。
大切な、愛しい貴方と。
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