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22・わかること②
しおりを挟むそれにしても、僕を支えてくれているホセも含めて、この場にいるこの四人の雰囲気はいったい何なのだろうか。
そもそも三人が今ここにいることさえ僕には理解できない。
ネアはフォルのことを主と呼んでいる。
だが、その割にはなんだか態度が妙に気安く見えて。
少なくとも先程のよう、窘めたり指摘したりなどが出来る間柄のようだった。
この中ではどう見てもネアが一番年上に見えるので、その関係なのかもしれないけれども。
そしてホセもおそらくはフォルのことなのだろう、『あいつ』などと称していて、まるで物凄く親しいみたいだ。
大領主、なんて存在と親しいだなんて。
僕はホセをただ、あの集落にいる医療師だとしか思っていなかったのだけれど、もしかしたら違っているのかもしれない。
ここにこんなにも早く辿り着けた手段とやらといい、僕が知らないことがたくさんあるような気がした。
シズはシズで今この場に馴染んで見えているだけでも他の皆とあまり違うようには思えなくて。
いったい何なのだろうと疑問でいっぱいになりながら、ホセに促されるまま、皆の輪の中に加わるかのような位置へと腰を落ち着けた。
するとすかさず使用人らしき女性が飲み物を近くへと置いて行く。
ホセがさっとそれに手を伸ばし、水差しから透明な水を注ぎ入れたグラスを僕へと差し出した
「とりあえずこれでも飲むといい」
「ありがとう、ございます……」
大人しく受け取って口を付ける。
口の中に広がったのは、眠る前に飲んだのと同じ果実水のような飲み物と同じ味。
ほんの僅かだけ甘くてすっきりしている。
少しだけ心が落ち着いた。
多少なり皆を改めて確かめる余裕が持てた気がする。
ホセと、シズと、ネアとフォル。
この場にいるのはこの四人。
全員少なからず、僕の番の匂いと同じ、なんだかいい匂いを漂わせている人物。
今も僕はずっとその匂いに包まれていて。
でも。
この中には番はいない。
それだけがどうしてかはっきりとわかっていた。
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