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13・旅路⑤
しおりを挟むそこから瞬く間に視界が悪くなる。
非常に薄暗く、近くにいる人の顔の判別がかろうじてできる程度。
同行している者の一人がランプのような物を点けて、その周囲だけ僅か明るくなった。
出入口をぴったりと閉じているおかげか、砂が吹き込んでくるというようなことはなかったが、風が強く、テントのように張った布を撓むほど揺らしているのがわかる。
「砂嵐……」
初めてのことに何となく不安を感じた僕を察したのだろう、ホセが柔らかく微笑んだ。
「ああ、砂嵐。デュニナは初めてだったか?」
「ええ」
少なくともホセの元へ身を寄せるようになってから、この旅路でも、そういったことは一度も起こっていなかったはずだ。
「そうか。だけど心配しなくてもいい。ここにいる限りはおそらく、大きな問題とはならないことだろう。ただ……」
「ただ?」
止まった言葉を引き継いだのはネア。
「今は本来、砂嵐の時期ではありません。今、起こっている嵐も直に止むでしょう。しかし、そういった時季外れの砂嵐は、すぐにまた襲ってくる。それは我々の見立てでも変わりません。――……予兆を感じてはいたのですが……」
聞けばこの地域の砂嵐という物は、たいてい季節が決まっており、それ以外の時期に発生した場合は、短い砂嵐が日に何度も、数日間襲ってきたりするのだそうだ。
だから今回もきっとそうで、予兆というのは実はネアが僕の居た集落に向かう途中にも砂嵐に襲われたとのこと。
その所為で少し予定よりも時間がかかってしまったという。
おそらくその砂嵐は僕の居た集落までは届いていなかったとも考えられるのだそうだ。
今いる場所は行きに砂嵐に見舞われたのと近い場所であるらしい。
それもあり、あるいはもしかしたら、とは予測していたが、上手く切り抜けあれればとも願っていたとネアは語った。
「いずれにせよ、しばらくはここを動けない。デュニナは今のうちにしっかり体を休めておくといい」
ラクダにずっと乗っているのも疲れるだろう?
ホセの宥めるような言葉に頷く。
実際に僕に出来ることなど何もなく、ただ大人しくしていることしかできなかった。
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