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9・旅路①
しおりを挟むその日のうちに旅路についた。
あまりに性急で戸惑わずにはいられなかった。
僕は元々身重で、ただ普通に歩くだけでもホセが補助してくれていた。
それで砂の上などを、どうして歩けるというのだろう。
あの、砂漠で気が付いた時。
きっとあの時も歩かねばと足を進めはしたけれど、おそらくすぐに力尽きてしまったはずだ。
ホセとネアはとりあえずとでも言うかのように、陽射し除けだろう、僕を布で覆い隠して、そのままラクダの上へと乗せ上げてしまった。
自分の足で歩くのではなく、これに乗って行けという話であるらしい。
近くには僕が乗せられている以外にも、荷物を乗せた数頭のラクダ。……僕は荷物の一つなのかもしれない。
共に行くのはホセとネアの他にシズ。それと護衛か侍従かわからないが数名の男たち。
女性の影のない花のない人員である。
別に花が欲しいわけではないけれども。
ラクダの数はもっと多く、それぞれ全員が何らかの荷物を背負い、隊列を組んで進んでいく。
ラクダに乗せられ、何も持たされていないのは僕一人。
また、少しでも乗り心地がいいようにか、僕の乗っているラクダには他にもクッションか何かのように布のようなものが乗せらえていて。
揺れはするし慣れてもいない、しかし予想していたよりも辛くはなかった。
特にネアが本来の姿か、もしくはそれ以上にか、巨大化した上で常に太陽を遮る位置で寄り添うように歩いてくれて、凶暴な陽の光をほとんど浴びずに済んだのも大きい。
かなり頻繁に取られた休憩の度、ホセが大変、気にして貴重だと思われる飲み物などを率先して僕に取らせようとしてくれた。
おかげで脱水などの心配もなく、目立って体調を崩すこともなく、僕は砂漠を進むことが出来たのだった。
意外だったのはあれほど辺り一面砂しか見えないと思ったのに、進んでみると砂地ばかりではなく、岩場や、僅かばかりなら木の生えているような所も意外に多かったことだろう。
あとはオアシスとオアシスの間、集落と集落の間も、それほど離れてはいないようでもあった。
「あそこは辺境ではあるけれど、大領主の領主邸がある都市まではそれなりに集落が密集しているんだ」
そう説明してくれたのはやはりホセだ。
ネアもシズもあまり口数が多くなく、他の者もほとんど口を開かない。
僕の話す相手はもっぱらホセばかり。
これではあのホセの元へ身を寄せていた時とあまり変わらないな。
僕はちらと心の中でだけ呟いた。
違うのは場所が砂漠の只中であることと、ラクダの上に乗っているということぐらい。
ネアとシズが常に傍にいるからだろうか、僕はこれまで以上にあの番のいい匂いに包まれていて、それだけでほっと、どこか心が安らいでしまうほどだった。
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