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おかわり!
*x-21・想い合うということ⑧
しおりを挟むリシェの視線は、どうしてか、恐ろしいほどに其処へと釘付けだった。
サフィルは首を傾げる。
いったいどうしたというのだろうか。
何の変哲もない、薄く貧相な男の体だ。
昨日も一昨日も、何なら初めて会ったその日の夜にも見ているはず。
何せ体を重ねるとなると、最終的には二人とも、何も身に着けていない状態になっているのだから、今更だと思うのだけれども。
リシェの視線を理解しないまま、サフィルは自分の両手で自分の両胸を掴んだ。
膨らみなどほとんどないその部分、少しばかり濃い色となっている胸の頂き、ささやかすぎる突起をつまむ。
人差し指と親指で、もにょっと押すようにして、吸いやすいように盛り上げた。
へこんでいる、わけではないとはいえその先は勿論、当たり前の尖ったりなどもしていなくて、ああ、これでは将来子供を持った時に、きっと赤ん坊は吸いづらいだろうな、なんてなんとなく思いながら、リシェへと促すよう、心持ち胸を突き出すようにした。
「さぁ、リシェ様」
だけど、そう、声をかけてもリシェはまだ動かず。サフィルはやはり、どうしてかと首を傾げた。
胸に、興味を抱いていたのではなかったのだろうか。
こんな貧相な胸なんて、触っていてもつまらないだろうし、ならばいっそと、そう思ったのだけれど。
しばらくそのまま待っていたサフィルは、それでも動かないリシェに、
(ああ、でも触りたかっただけで、吸いたくはなかったのかも……)
などと言うことにやっと思い至った。
ならばこんな行動、みっともないだけではないだろうかとも同時に思い、なんとなく恥ずかしくなって、でも今更、胸から手を放せなくて。
「えぇっと……あの。リシェ、様? やはり、止めて……おきますか?」
なんとなく控えめに提案すると、途端リシェはガバッとサフィルの顔を振り仰いで、
「い、いや! やめない!」
などと、叫ぶように嫌に強い口調でそう告げ、首を激しく横に振った。
更に、
「す、吸う! す、吸わせて、貰う……ぁ、その……で、では、失礼して……」
と、勢い込んで宣言したかと思うと、次いで一転、声を揺らして、おそるおそるという風に顔をサフィルの胸へと近づけていく。
リシェ自身を支える為だろう、サフィルのすぐ傍へとつかれたリシェの手が、ぎし、小さく音を立てた。
サフィルは、どうしてか急に、またしても早くなった鼓動を感じながら、近づいてくるリシェの頭を見下ろし続けた。
そしてついに、ぴちゅ、微かな水音と共に、サフィルの胸の頂へと触れる。
吸う、のではなく舐めたらしい。
「ぁっ……」
その瞬間、ぞく、背筋を這い上がった感覚はいったい何だったのか。
サフィルはわからないまま、だけど、なんだか物凄く、居た堪れないような気持ちになっていたのだった。
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