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おかわり!
*x-1・夜について①
しおりを挟むところで、リシェとサフィルの、三夜目の話をしたいと思う。
リシェとサフィルが、無事に二夜目を迎えることが出来たのは、あの初めて会った日の夜、初夜以降、実にひと月以上が経ってからのことだった。
否、あの夜の、強引で痛みに塗れた行為を思えば、二ヶ月もかからなかったとそう解釈するべきなのだろうか。
初めの頃はすっかり怯え切って、体だって強張らせるばかりだったサフィルは、しかしたったのひと月と少しでそんな様子をまるで見せなくなっていて、剰え自らリシェへと、身を摺り寄せるまでになっていた。
勿論、控えめなサフィルが、はしたなくも大胆にそのようなことをするわけではなく、ただ、随分と近くなった距離に、リシェが勝手にどぎまぎしていただけなのだけれども。
そんな中迎えた二夜目は、控えめに言って最高だった。
それは勿論、双方にとって。
リシェからすれば、全く知らなかったことをいろいろと知ることになった夜ともなったし、サフィルにとっては、ただひたすらに羞恥の限界に挑むかのような夜だった。
なにせサフィル自らリシェへと、閨ごとの指導のようなものをせざるを得なかったのである。
それもひとえに、リシェが何も知らなかったが故に。
最初の夜を、再び繰り返さない為に。
そんな二夜目を超えて三夜目は早速翌日の夜となった。
いつも通りすっかり寝支度を整えてリシェと二人。ぎこちなくお互いに促し合って、ベッドの上へと乗り上げながらサフィルはドキドキしながら必死で昨日のことを思い返していた。
さて、自分はいったい何をどれぐらい、説明できていただろうかと、そう。
(慣らす、ことはお伝え出来たと思うのだけれど……)
あとはなんだったろうか。そう、
(あとは……くちづけ)
唇同士を触れ合わせた。
そうしたら物凄く気持ちよくなってしまって。そして。
……――そこから先の記憶は、サフィルには少しばかり曖昧だ。
だから、二夜目にサフィルがリシェへと伝えられたのは、慣らすこととくちづけについてだけだったのではないかと思う。
当然閨ごとは、そのたった二つだけで完結なんてしない。
他にもある。
詳しくはないけれど、サフィルは他にも知っていた。だから、
「サフィル……」
「んっ、ぁんっ……」
二人して寝台の上へと乗り上げて、さっそくとばかり、唇を寄せてこようとしたリシェに、ひとまずは抗わずくちづけを受けた後、つんつんと舌が、サフィルの唇をつついて中に入って来ようとするのは流石に拒んで、サフィルはそっとくちづけを解いた。
だってそうされてしまうと、サフィルはまたすぐにわけがわからなくなってしまいそうだったから。
「……サフィル?」
怪訝そうなリシェから顔を逸らす。
少しだけ声が悲しそうに聞こえて胸が痛んだ。でも。
「えっと……ぁの、その……昨夜の、お話、ですが……まだ、お伝えすることが、たくさん、あって、ぁの……」
くちづけに没頭してしまうと、きっとすぐに気持ちよくなってしまうから。だからと、羞恥を堪えて、サフィルは懸命にリシェへと訴えたのだった。
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