183 / 242
*180・俺と試練の夜④(リシェ視点)
しおりを挟む「あの、自分で……しようと、思っていて、だから、その……」
サフィルは魔術を行使するつもりでいたのだそうだ。
だから用意していないのだと小さな声で教えてくれた。
なんでも水魔術の応用で粘度を高めた液体を出して、それを使用する予定だったのだとか。
サフィルが躊躇いながら手を伸ばしてきたので、咄嗟に、サフィルの窄まりに押し入れているのとは逆の方の手で捕まえると、途端、おそらくは魔術を行使したのだろうぬるついた感触がして。なるほど、こういった液体が必要なのかと納得した。
だが、初めて見る魔術を、たった今直ぐに自分も同じように行使できるとは思えない。
水魔術の応用なら、おそらくそれほど難しいものではないとは思うのだが、今は無理だ。
こんな、興奮ゆえにほとんど頭が働いていないような状況では。
「…………香油が要るな……」
この粘度の液体が必要だというのなら、サフィルの言うとおり、香油か何かを使用するのが一番いいのではないかと呟いた。
ならばその香油はいったいどこにあるというのか。
「サフィル、香油などそういったものがどこにあるか知っているか?」
今、この状態で侍女を呼ぶ気になどとてもならない。むしろこんな格好のサフィルを誰かの目に晒すと考えただけで、とてつもなく嫌な気持ちになった。
同時に、おそらくこの部屋にはないのではないか、そんな気もした。
なら、いったい何処ならあるのか。
ひとまず、ずると、いまだ押し込んだままだった指をサフィルの窄まりから引き抜く。
入れていたのは人差し指の第二関節ぐらいまでだった。
「んっ」
サフィルが小さく息をつめるので、また更に股間が張り詰めてしまって、痛いほどだと感じながら、なんとはなく周りを見回す。
目の届く場所にそんなもの、あるはずがない。
サフィルも俺と同じようにどうやら考えていたらしい、ややあって、
「……浴室なら、もしかしたら」
言われて、そういえば確かに湯を使った後、侍女たちが何やら肌に塗り込めたりするものがあったなと思い至った。
もっとも俺自身は、あまりそこまでの世話をさせることこそほとんどないのだが。精々式典や外交などの直前ぐらいである。
まさか置きっぱなしというのも考えづらいが、この部屋の中よりは可能性があるだろう。
サフィルの様子をよく見ようとするあまりにだろうか、知らぬ間にサフィルの上へと覆いかぶさるような体勢となっていた上半身を起こす。
そこでようやく俺は、自分の夜着をほとんど乱していなかったことに気付いた。
サフィルは裸だ。
何も身に纏っていない真白い体。
肌と肌を交わす。ならば俺の方も裸であるべきなのだろう。
バサと上を脱いで、下穿きをずり下げるとぶるん、勢いよく、すでに硬く昂り切った俺自身がようやく息を吐けるとばかりに飛び出してきた。
今にも腹につきそうなほど上を向いていて、なんとなく気まずい気持ちになったが、とっとと寝台を降りて浴室に向かうことにした。
サフィルは真っ赤に顔を染めて、頭ごと目を逸らしたまま、ちらともこちらを見なかった。
0
お気に入りに追加
907
あなたにおすすめの小説
薬師は語る、その・・・
香野ジャスミン
BL
微かに香る薬草の匂い、息が乱れ、体の奥が熱くなる。人は死が近づくとこのようになるのだと、頭のどこかで理解しそのまま、身体の力は抜け、もう、なにもできなくなっていました。
目を閉じ、かすかに聞こえる兄の声、母の声、
そして多くの民の怒号。
最後に映るものが美しいものであったなら、最後に聞こえるものが、心を動かす音ならば・・・
私の人生は幸せだったのかもしれません。※「ムーンライトノベルズ」で公開中
番だと言われて囲われました。
桜
BL
戦時中のある日、特攻隊として選ばれた私は友人と別れて仲間と共に敵陣へ飛び込んだ。
死を覚悟したその時、光に包み込まれ機体ごと何かに引き寄せられて、異世界に。
そこは魔力持ちも世界であり、私を番いと呼ぶ物に囲われた。
結婚式の晩、「すまないが君を愛することはできない」と旦那様は言った。
雨野六月(旧アカウント)
恋愛
「俺には愛する人がいるんだ。両親がどうしてもというので仕方なく君と結婚したが、君を愛することはできないし、床を交わす気にもなれない。どうか了承してほしい」
結婚式の晩、新妻クロエが夫ロバートから要求されたのは、お飾りの妻になることだった。
「君さえ黙っていれば、なにもかも丸くおさまる」と諭されて、クロエはそれを受け入れる。そして――
【R18】【Bl】魔力のない俺は今日もイケメン絶倫幼馴染から魔力をもらいます
ペーパーナイフ
BL
俺は猛勉強の末やっと魔法高校特待生コースに入学することができた。
安心したのもつかの間、魔力検査をしたところ魔力適性なし?!
このままでは学費無料の特待生を降ろされてしまう…。貧乏な俺にこの学校の学費はとても払えない。
そんなときイケメン幼馴染が魔力をくれると言ってきて…
魔力ってこんな方法でしか得られないんですか!!
注意
無理やり フェラ 射精管理 何でもありな人向けです
リバなし 主人公受け 妊娠要素なし
後半ほとんどエロ
ハッピーエンドになるよう努めます
新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
奴の執着から逃れられない件について
B介
BL
幼稚園から中学まで、ずっと同じクラスだった幼馴染。
しかし、全く仲良くなかったし、あまり話したこともない。
なのに、高校まで一緒!?まあ、今回はクラスが違うから、内心ホッとしていたら、放課後まさかの呼び出され...,
途中からTLになるので、どちらに設定にしようか迷いました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる