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*180・俺と試練の夜④(リシェ視点)

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「あの、自分で……しようと、思っていて、だから、その……」

 サフィルは魔術を行使するつもりでいたのだそうだ。
 だから用意していないのだと小さな声で教えてくれた。
 なんでも水魔術の応用で粘度を高めた液体を出して、それを使用する予定だったのだとか。
 サフィルが躊躇いながら手を伸ばしてきたので、咄嗟に、サフィルの窄まりに押し入れているのとは逆の方の手で捕まえると、途端、おそらくは魔術を行使したのだろうぬるついた感触がして。なるほど、こういった液体が必要なのかと納得した。
 だが、初めて見る魔術を、たった今直ぐに自分も同じように行使できるとは思えない。
 水魔術の応用なら、おそらくそれほど難しいものではないとは思うのだが、今は無理だ。
 こんな、興奮ゆえにほとんど頭が働いていないような状況では。

「…………香油が要るな……」

 この粘度の液体が必要だというのなら、サフィルの言うとおり、香油か何かを使用するのが一番いいのではないかと呟いた。
 ならばその香油はいったいどこにあるというのか。

「サフィル、香油などそういったものがどこにあるか知っているか?」

 今、この状態で侍女を呼ぶ気になどとてもならない。むしろこんな格好のサフィルを誰かの目に晒すと考えただけで、とてつもなく嫌な気持ちになった。
 同時に、おそらくこの部屋にはないのではないか、そんな気もした。
 なら、いったい何処ならあるのか。
 ひとまず、ずると、いまだ押し込んだままだった指をサフィルの窄まりから引き抜く。
 入れていたのは人差し指の第二関節ぐらいまでだった。

「んっ」

 サフィルが小さく息をつめるので、また更に股間が張り詰めてしまって、痛いほどだと感じながら、なんとはなく周りを見回す。
 目の届く場所にそんなもの、あるはずがない。
 サフィルも俺と同じようにどうやら考えていたらしい、ややあって、

「……浴室なら、もしかしたら」

 言われて、そういえば確かに湯を使った後、侍女たちが何やら肌に塗り込めたりするものがあったなと思い至った。
 もっとも俺自身は、あまりそこまでの世話をさせることこそほとんどないのだが。精々式典や外交などの直前ぐらいである。
 まさか置きっぱなしというのも考えづらいが、この部屋の中よりは可能性があるだろう。
 サフィルの様子をよく見ようとするあまりにだろうか、知らぬ間にサフィルの上へと覆いかぶさるような体勢となっていた上半身を起こす。
 そこでようやく俺は、自分の夜着をほとんど乱していなかったことに気付いた。
 サフィルは裸だ。
 何も身に纏っていない真白い体。
 肌と肌を交わす。ならば俺の方も裸であるべきなのだろう。
 バサと上を脱いで、下穿きをずり下げるとぶるん、勢いよく、すでに硬く昂り切った俺自身がようやく息を吐けるとばかりに飛び出してきた。
 今にも腹につきそうなほど上を向いていて、なんとなく気まずい気持ちになったが、とっとと寝台を降りて浴室に向かうことにした。
 サフィルは真っ赤に顔を染めて、頭ごと目を逸らしたまま、ちらともこちらを見なかった。
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