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105・寂しい朝食

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 朝食も勿論一人で、やはり寂しい、そう思う。
 王宮を出たのは3日前。
 なにせ王宮から離宮までは馬車でたった2日の距離。
 つまりリシェに見送られたのも、たった3日前のことだった。
 たかが3日、されど3日だ。
 一ヶ月と少し前。
 マチェアデュレこの国へと嫁いできて、婚姻式を上げて。そこから3日前まで、リシェとは毎日一緒だった。
 毎食とまで行かなくとも、一日の内でまったく同じ食卓を囲まなかったなどと言うことは一度もない。
 当然、夜も毎晩同じベッドに横になった。
 初日の所為でつい、体を固くしてしまうサフィルに、だけどリシェは申し訳なさそうにこれだけはと、毎夜抱きしめて眠りについた。
 サフィルが、体から力を抜くことこそできなくとも、それにすっかり慣れてしまったのはいったいいつの頃だったろうか。
 多分それなりに早い時期からだったように思う。
 体が強張るのは反射的なもので、サフィル自身が意識してのものではなかった。
 そんな頑なな体をリシェに抱きしめられて、ますます体を固くして、だけど寝台であたたかなリシェの体温を感じながら目を瞑っていると、いつの間にか寝入ってしまう。
 しかもその眠りは決して、浅いだとかいうわけではなかったのである。
 起きている間はほとんどずっと、どうしても体を強張らせてしまうのにどうして。
 自分でもよくわからない。
 だが、毎晩そんな風にリシェに抱きしめられたまま寝台に横になって、なのに眠れなかっただとかいうことなんてちっともなくて。
 リシェの体温を感じている間に、いつも意識が遠ざかっていっていた。
 昨夜は寝台にサフィル一人。リシェはおらず、だから体を強張らせたりするようなこともなく、なのにうまく眠れなかったのだ。

(いつの間にこんなに、リシェ様に慣れたんだろう)

 自分でも不思議に思う。
 そういえば旅の途中、宿に泊まった時だって、上手く眠れないばかりだった。
 知らない場所に行く緊張ゆえなのだろうと思っていたし、昨夜だってもちろん、緊張はあった。
 でも、力を抜くことが出来ない、だなんていうことはなかったはずなのに。
 きっとそれらは寂しいからで、つまりはリシェが恋しいからなのだろう。
 リシェに見送られた3日前からずっと、そういえばサフィルはリシェを思い出してばかりいる。
 リシェを思い出して、そして、今、傍にいない事実が寂しくて。
 サフィルは、自分がこんな風になるだなんて、全く予想もしていなかったのだ。
 リシェと、たった3日離れただけで、こんなに心細くなるとは思わなかった。
 自分でも自分がよくわからない。
 いつの間にこんなにも、リシェの存在に慣らされていたのだろうか。
 たったの3日。それだけでこんなにも痛感した。
 自分がどれだけリシェを求めているのかを。
 傍に居たい。
 今はただ無性にそう思う。
 何故、そう思うのかがわからない。
 リシェを、まだ怖いと思う部分もある
 なのにいないと寂しくて。
 すぐ傍で、抱きしめて欲しかった。
 一人きりの朝食が寂しくて寂しくて、辛くて。
 上手く味の感じられないいつも通りのはずの朝食を口に運びながら、もう耐えられない、そう思う。
 今はただ、どうしてだろう、リシェに会いたくて堪らないばかりだった。
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