107 / 242
104・睡眠不足
しおりを挟む夜はそのまま案の定、よく眠れないまま朝を迎えた。
離宮内の温度は適温に保たれていて、そうでなくともマチェアデュレは一年を通して、比較的過ごしやすい気温のままあまり変化がない国である。
だから、暑いだとか寒いだとかいうようなことはなかった。
ない、はずだった。
なのにどうしてあんなにも、昨夜は寒く感じたのだろう。
わからなくなりながら、それでもうつらうつらと浅い眠りを繰り返し、ようやくしっかりと寝入ることが出来たのは空が白み始めた頃。
薄くあけられたままの天蓋の隙間から、なんとなく夢うつつで、青白く朝の近づく窓の外を見ていた気がする。
目覚めた時には当然、すっきりとと言う風にはいかなかった。
どことなく体が重怠いのは、睡眠が足りていない所為なのだろう。
勿論、旅の疲れもあるかもしれず、むしろ侍女たちはそちらの方を気にしてか、朝だと起こしに来た時間は王宮で過ごす時のそれより、随分と遅い頃合いだった。
いつもならもう朝食を食べ始めているような時間。
(もしかして寝坊しちゃったかな……)
ぼんやりと目を擦るサフィルに、侍女たちは何処か気遣わし気な眼差しを注いで、
「聖王妃陛下。もしまだお疲れでしたら、もう少しお休みになりますか?」
そんなことまで申し出てくれる。
一瞬迷って、だけどサフィルは首を横に振った。
「ううん、起きるよ。いつもより遅い時間でしょう? 急がないと……イーニア様がいつ頃お手すきになるかもわからないしね」
イーニア自身、何時頃になるだとかはわからないと言っていた。
きっとサフィルよりずっと、起きるのに易くはない状況なのだろう。
臥せったままあまり動けない状況だなんて、いったいどれぐらい何をどうなさったと言うのか。サフィルには実際の所、よくわからないままだった。
勿論、イーニアがはっきりとは告げなかった理由は察している。
つまりは閨ごとが関わっているのだろう。
セディは見るからに老齢だったというのに元気なことだ。
しかしサフィルは正しくあの初夜の一夜しか経験がなく、しかも体の不調はさっさと治癒魔術で治してしまったという経緯があった。
それでも、もしあの朝、治癒魔術が使えなかったとしたらと、想像するだに恐ろしい。
そう思うと急にイーニアが心配になってきて、当然、二度寝を、だなんて考えられるはずがない。
侍女たちはそんなサフィルの心情までもを慮ったわけではないのだろうけれど、ただ素直に頷いて、
「かしこまりました。ではすぐにお支度をお手伝いいたしますね」
言いながら今日身に着ける予定なのだろう衣装を差し出してきた。
それを受け取りながらサフィルも首肯した。
「うん、頼むよ」
手に取ってみると、背中側にひもがついていて、今日の衣装はどうやら仕上げに侍女たちの補助が必要そうだ。
(あれ? いつもより少し装飾が多い、かな?)
思いながらもサフィルは抗わず、大人しく着替え始めたのだった。
0
お気に入りに追加
907
あなたにおすすめの小説
奴隷騎士のセックス修業
彩月野生
BL
魔族と手を組んだ闇の軍団に敗北した大国の騎士団。
その大国の騎士団長であるシュテオは、仲間の命を守る為、性奴隷になる事を受け入れる。
軍団の主力人物カールマーと、オークの戦士ドアルと共になぶられるシュテオ。
セックスが下手くそだと叱責され、仲間である副団長コンラウスにセックス指南を受けるようになるが、快楽に溺れていく。
主人公
シュテオ 大国の騎士団長、仲間と国を守るため性奴隷となる。
銀髪に青目。
敵勢力
カールマー 傭兵上がりの騎士。漆黒の髪に黒目、黒の鎧の男。
電撃系の攻撃魔術が使える。強欲で狡猾。
ドアル 横柄なオークの戦士。
シュテオの仲間
副団長コンラウス 金髪碧眼の騎士。女との噂が絶えない。
シュテオにセックスの指南をする。
(誤字脱字報告不要。時間が取れる際に定期的に見直してます。ご報告頂いても基本的に返答致しませんのでご理解ご了承下さいます様お願い致します。申し訳ありません)
薬師は語る、その・・・
香野ジャスミン
BL
微かに香る薬草の匂い、息が乱れ、体の奥が熱くなる。人は死が近づくとこのようになるのだと、頭のどこかで理解しそのまま、身体の力は抜け、もう、なにもできなくなっていました。
目を閉じ、かすかに聞こえる兄の声、母の声、
そして多くの民の怒号。
最後に映るものが美しいものであったなら、最後に聞こえるものが、心を動かす音ならば・・・
私の人生は幸せだったのかもしれません。※「ムーンライトノベルズ」で公開中
結婚式の晩、「すまないが君を愛することはできない」と旦那様は言った。
雨野六月(旧アカウント)
恋愛
「俺には愛する人がいるんだ。両親がどうしてもというので仕方なく君と結婚したが、君を愛することはできないし、床を交わす気にもなれない。どうか了承してほしい」
結婚式の晩、新妻クロエが夫ロバートから要求されたのは、お飾りの妻になることだった。
「君さえ黙っていれば、なにもかも丸くおさまる」と諭されて、クロエはそれを受け入れる。そして――
メス堕ち元帥の愉しい騎士性活
環希碧位
BL
政敵の姦計により、捕らわれの身となった騎士二人。
待ち受けるのは身も心も壊し尽くす性奴化調教の数々──
肉体を淫らに改造され、思考すら捻じ曲げられた彼らに待ち受ける運命とは。
非の打ちどころのない高貴な騎士二人を、おちんぽ大好きなマゾメスに堕とすドスケベ小説です。
いわゆる「完堕ちエンド」なので救いはありません。メス堕ち淫乱化したスパダリ騎士が最初から最後まで盛ってアンアン言ってるだけです。
肉体改造を含む調教ものの満漢全席状態になっておりますので、とりあえず、頭の悪いエロ話が読みたい方、男性向けに近いハードな内容のプレイが読みたい方は是非。
※全ての章にハードな成人向描写があります。御注意ください。※
【完結】酔った勢いで子供が出来た?!しかも相手は嫌いなアイツ?!
愛早さくら
BL
酔って記憶ぶっ飛ばして朝起きたら一夜の過ちどころか妊娠までしていた。
は?!!?なんで?!!?!って言うか、相手って……恐る恐る隣を見ると嫌っていたはずの相手。
えー……なんで…………冷や汗ダラダラ
焦るリティは、しかしだからと言ってお腹にいる子供をなかったことには出来なかった。
みたいなところから始まる、嫌い合ってたはずなのに本当は……?!
という感じの割とよくあるBL話を、自分なりに書いてみたいと思います。
・いつも通りの世界のお話ではありますが、今度は一応血縁ではありません。
(だけど舞台はナウラティス。)
・相変わらず貴族とかそういう。(でも流石に王族ではない。)
・男女関係なく子供が産める魔法とかある異世界が舞台。
・R18描写があるお話にはタイトルの頭に*を付けます。
・頭に☆があるお話は残酷な描写、とまではいかずとも、たとえ多少であっても流血表現などがあります。
・言い訳というか解説というかは近況ボードの「突発短編2」のコメント欄からどうぞ。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる