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75・俺の馬鹿な衝動(リシェ視点)

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「だってこれから長く、僕の暮らしていく国でしょう? それを知りたいと思うことは、そんなにおかしいことでしょうか?」

 心が震えるというのは、きっとこういうことを言う。
 その言葉を聞いた瞬間、俺は知らず目を見開いていた。
 サフィルはかわいい。可愛くて綺麗で、そしてとても大人しい少年だと思っていた。
 事前にリリフェステまでサフィルの教育のため、赴いた司祭たちからもそう聞いている。
 むしろ何処か主体性のないところのある人物のようだと、そう。
 サフィルは何かを主張することが、初めからなかったのだという。
 感情がなかったり、無感動だったりするわけではない。
 だが、意思は弱く、自分の意見もほとんど言わない。むしろそんなものないのかもしれないと思うほど、ただ言われるがままを諾々と受け入れていたと。
 司祭たちは、心配だとすら言っていた。
 非常におとなしい青年で、司祭たちの言葉のどれもに苛立つ様子も、不快になった様子もなく、いっそ儚くさえ見えたのだそうだ。
 大切に囲わなければ。そう思ったと聞いたのは、あの初夜の後のことだった。
 なのに無体を働いたと大変に叱られたのだから。
 あれほどか弱く見える存在に、何故そんなことが出来たのかと司祭たちの誰もが怒り心頭だった。
 俺も今となっては反省している。
 いくらサフィルの可愛さにやられ、欲が勝ってしまったのだとしても、あれは流石にまずかった。
 おかげで俺が近くにいる限り、サフィルの体の強張りは解けない。
 きっとまだ時間が必要なのだろう。
 歩み寄ろうとしてくれているのもわかるから、焦らずにいよう、そう考えている。
 そう、考えてはいるのだけれど。
 サフィルは、きっと、俺や司祭たちが考えているよりも強い。
 そして何より柔軟に、俺たちの予想よりもずっと強く、これからを考えてくれているように見えた。
 その前向きさに、心が震えたのだ。
 サフィルのそんな強さは、やはりどこまでも美しかった。
 知りたい。そう言ってくれるのが嬉しい。だから。

「あ、いや、そんな……おかしくなんてない! むしろその……嬉しい、嬉しいよ、サフィル……ああっ……!」

 感極まってつい、向かい側に座っていたのにも関わらず、ソファからふらりと立ちあがり、机を回り込んだかと思えば、ガバッと抱き竦めてしまった。
 途端、強張る体にしまったと冷や汗をかく。
 ああ、やってしまった。
 先程焦らずに行こう、そう思ったばかりだというのに。
 何より、ある程度距離があった方がいいだろうと、わざわざ向かい合わせに座ったのだ。
 応接スペースのソファ、すぐにでも触れられる隣ではなくて。
 だが、わざわざ机を回り込みまでしては台無しだった。
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