【完結】前世を思い出した身ごもり公爵令嬢は過保護な溺愛国王から逃れたい

愛早さくら

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28・新しい相談相手

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 それはそれとして、まぁ、無理だなとは思っているのだけれど、せめてそういった行いを夜だけにして、出来れば日中は陛下にはしっかりと仕事をしてほしい、だなんてことを、陛下にはどうにも言えそうもなかったので、他の人に相談してみることにした。
 リダにはすでに相談済みなので、他となると一番に思い至ったのは、陛下の乳兄弟とも言えるアリムエ執政官である。
 彼は私にとても同情的で、かつ陛下と非常に近い距離間の人物だった。
 思考も柔軟で、判断力に優れ、頭もいい。きっと協力してくれるはずだ。
 もっとも、誰とどんな会話をどこでしたって、陛下にはきっと全部筒抜けなのだろうけれど。いや、それ込みでアリムエ執政官はどうにかしてくれるのだろうか。わからない。
 目覚めた陛下と、部屋へと運んでもらった朝食を一緒に摂り、その時もまた、膝の上に抱き上げられたり、全部の食事を陛下の手ずから食べさせられてしまったり逆に恥ずかしがりながら陛下に食べさせたりして、かつ、くちづけ、からの再度の行為など、羞恥しか感じられない朝の光景を繰り広げ、ようやく陛下を執務室へと送り出した時には、私はまたベッドの上の住人と化していた。
 陛下は朝から大変に精力的で、あまりにも逞しすぎるのである。
 私より魔力が多いからだろうか。
 魔力の多さに比例して髪や目の色が薄くなる傾向があるこの世界において、濃いめの水色の髪と、黒に近い紫の瞳の私と、甘い蜂蜜色の髪に深い海のようなネイビーの瞳の陛下とでは、一目見て明らかなほどには、魔力の量に差があった。
 それはそのまま、体力や精力の差となるのである。
 はじめから叶うはずがなかった。
 そうだった。そういう意味でも、私は陛下の成すがままなのだ。
 面白くないな、と思うのは、前世の感覚だろう、今世の私はそれらを何も思わず受け入れていたようなので。
 とにかく、そうして朝から臥せって、ようやく昼前に起き出して、私は昼食だと陛下の所へ向かうのではなく、アリムエ執政官がいる可能性が高い、政務室へと足を向けた。
 文官が多く詰めている場所で、実は陛下にはあまり行かないようにと言われている所でもある。
 これはもしや怒られるだろうかとちらと思って、でもまぁいいかとすぐに思い直した。
 そんなことをいちいち気にしていたら、現状を何も変えられない。
 前世の感覚を思い出した私は、今までの私と同じではないのだから、陛下に囲われるように日々を過ごすだけだなんて、やっぱり耐えられないとしか思えない。
 アリムエ執政官は幸いにして政務室で仕事をしていた。
 私を見て、目を丸くして驚いている。
 私は彼に向けて、少しだけ、申し訳なさそうな顔で微笑んで見せた。彼にはそれだけで何事かが通じたようだった。
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