【完結】前世を思い出した身ごもり公爵令嬢は過保護な溺愛国王から逃れたい

愛早さくら

文字の大きさ
3 / 49

2・現状①

しおりを挟む

 状況を整理したい。
 未だにこの見目麗しい男性の膝の上だけれども。
 とりあえず恥じらっているふりで顔を伏せているからわからないはず。
 私は前世、日本人だった。成人している普通の社会人だ。名前は……――今はもういい、今、考えたいことはそれではない。
 年齢や死因も同じく。たぶん死んだと思う。死んだはず。だからこそ生まれ変わったのだろうし。
 それもいいのだ。それではなくて。
 考えたいことは今世でのこと。
 私はここ、イェルティエ王国のハヌハナ公爵家の長女として生まれてきた。
 つまり高位貴族である。
 元庶民の私が! 公爵令嬢! しかも公爵家の!
 公爵家と言えばあれだ、何代か遡れば王家に行き着く。
 臣下に下った王族が賜る爵位が公爵だからだ。
 少なくともここ、イェルティエではそう。
 必然、領地を持たない公爵家も存在するが、我がハヌハナ家は領地も賜っている。
 歴史も古く、しかし幾度も王族が降嫁、あるいは婿入りして来ていた。逆に王族に嫁いだことも何回もある。……――そう、私のように。
 そういう家系。
 そういう家系で幼い頃から当時王太子だった第1王子に嫁ぐことが決まっていて、半年後には実際に、一足早く即位した新国王との結婚式を控えている。
 結婚相手の新国王がつまり、今、私を膝の上に乗せてでろでろに甘い声で囁いていた美丈夫。名を、ジェラマト陛下という。

「フィア……恥ずかしがる君も可愛いけど、いい加減早く私を見て?」
「陛下……」

 甘く囁きながらそっと顎を取られ、導くように顔を陛下の方へと向けさせられる。
 私は努めていつも通り・・・・・・・・うっとりと陛下を見た。
 見惚れるように。
 いや、実際に見惚れている。見惚れてはいるのだ、だって陛下は顔がいい。見ているだけで眼福だってぐらい顔がいい。
 甘い蜂蜜色の髪は形のいい輪郭を覆って、少し長めで真っ直ぐで、でも鬱陶しくはなくて、目の色は青。ネイビーとでも言えばいいのか、深い海の色。
 目鼻立ちのバランスが絶妙で美形というのはこういうのを言うのだなという見本のよう。
 そりゃあ私もうっとりと、眺め続けるというものだ。
 今も半ば本気で見惚れている。でも。
 残りの半分、前世を思い出した私の部分が心の中で悲鳴を上げていた。
 ぎゃー! やめてやめて、そんな顔で私を見ないで!
 そんなにキレイな顔をそんな風に近づけないで!
 顔がキレイすぎて滅されそう!
 ……――私はこんなにもイケメンに耐性がなかっただろうか……?
 いや、なかったな。前世、周りにイケメンなんていなかった。みんなフツメンだった。
 そりゃあ、こうもなる。
 しかも陛下はそのままそっと、私の唇を塞いできて……。

「ん……」

 私は小さく、鼻にかかった甘い吐息を漏らした。
 いや、だからほんとにやめて欲しい……。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

愛を騙るな

篠月珪霞
恋愛
「王妃よ、そなた一体何が不満だというのだ」 「………」 「贅を尽くした食事、ドレス、宝石、アクセサリー、部屋の調度も最高品質のもの。王妃という地位も用意した。およそ世の女性が望むものすべてを手に入れているというのに、何が不満だというのだ!」 王妃は表情を変えない。何を言っても宥めてもすかしても脅しても変わらない王妃に、苛立った王は声を荒げる。 「何とか言わぬか! 不敬だぞ!」 「……でしたら、牢に入れるなり、処罰するなりお好きに」 「い、いや、それはできぬ」 「何故? 陛下の望むままなさればよろしい」 「余は、そなたを愛しているのだ。愛するものにそのような仕打ち、到底考えられぬ」 途端、王妃の嘲る笑い声が響く。 「畜生にも劣る陛下が、愛を騙るなどおこがましいですわね」

働かないつもりでしたのに、気づけば全部うまくいっていました ――自由に生きる貴族夫人と溺愛旦那様』

鷹 綾
恋愛
前世では、仕事に追われるだけの人生を送り、恋も自由も知らないまま終わった私。 だからこそ転生後に誓った―― 「今度こそ、働かずに優雅に生きる!」 と。 気づけば貴族夫人、しかも結婚相手は冷静沈着な名門貴族リチャード様。 「君は何もしなくていい。自由に過ごしてくれ」 ――理想的すぎる条件に、これは勝ち確人生だと思ったのに。 なぜか気づけば、 ・屋敷の管理を改善して使用人の待遇が激変 ・夫の仕事を手伝ったら経理改革が大成功 ・興味本位で教えた簿記と珠算が商業界に革命を起こす ・商人ギルドの顧問にまで祭り上げられる始末 「あれ? 私、働かない予定でしたよね???」 自分から出世街道を爆走するつもりはなかったはずなのに、 “やりたいことをやっていただけ”で、世界のほうが勝手に変わっていく。 一方、そんな彼女を静かに見守り続けていた夫・リチャードは、 実は昔から彼女を想い続けていた溺愛系旦那様で――。 「君が選ぶなら、私はずっとそばにいる」 働かないつもりだった貴族夫人が、 自由・仕事・愛情のすべてを“自分で選ぶ”人生に辿り着く物語。 これは、 何もしないはずだったのに、幸せだけは全部手に入れてしまった女性の物語。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

捨てられた地味な王宮修復師(実は有能)、強面辺境伯の栄養管理で溺愛され、辺境を改革する ~王都の貴重な物が失われても知りませんよ?~

水上
恋愛
「カビ臭い地味女」と王太子に婚約破棄された王宮修復師のリディア。 彼女の芸術に関する知識と修復師としての技術は、誰からも必要性を理解されていなかった。 失意の中、嫁がされたのは皆から恐れられる強面辺境伯ジェラルドだった! しかし恐ろしい噂とは裏腹に、彼はリディアの不健康を見逃せない超・過保護で!? 絶品手料理と徹底的な体調管理で、リディアは心身ともに美しく再生していく。 一方、彼女を追放した王都では、貴重な物が失われたり、贋作騒動が起きたりとパニックになり始めて……。

仕事で疲れて会えないと、恋人に距離を置かれましたが、彼の上司に溺愛されているので幸せです!

ぽんちゃん
恋愛
 ――仕事で疲れて会えない。  十年付き合ってきた恋人を支えてきたけど、いつも後回しにされる日々。  記念日すら仕事を優先する彼に、十分だけでいいから会いたいとお願いすると、『距離を置こう』と言われてしまう。  そして、思い出の高級レストランで、予約した席に座る恋人が、他の女性と食事をしているところを目撃してしまい――!?

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

処理中です...