上 下
11 / 21

10・予想

しおりを挟む

「父は国を見限るとのことです」

 そしてそれを民にも広く伝えるという。
 私がリコスにそれを伝えたのは学園の裏庭、周りに樹々が生い茂り、程よく音が周囲に漏れない東屋の中でのこと。
 そのような軽い結界が張ってある場所だった。
 とは言え、全くの防音結界というわけではないのだけれど、私たちにとって警戒全て王妃様もシュネス殿下も、お二方とも警戒心の強い方々ではない。
 どれだけご自身のお立場などに絶対の自信を持っておられるのか、むしろそういった意味では無防備な方々とも言えた。
 実際、面と向かって彼らには向かわない限り、制裁などを加えられたなどと言う話は聞いたことがないのだから、むしろ浅はかとすら言えることだろう。
 王妃様のご実家の侯爵家の方がまだ、少しばかり警戒心が強いかもしれないけれどもそれだけ。
 とにかく陰口などに気付かれるような方々ではなかった。
 それはこのような話であっても同じだ。
 その上で少しばかり大目に結界を張っておけば、それだけで話が漏れる可能性はほとんどなくなってしまう。
 我が国の王家にはもともとは、影だとか、そういった諜報を担う者たちが存在していたと王宮での教育で習ったけれど、しかし今はそういった者たち皆、王妃様が使い尽くして、ほとんどいなくなっているのだとも聞かされていた。
 だからいろいろと注意するように・・・・・・・・・・・・とも。
 つまり私の護衛などに人員は避けないという話だったのである。
 シュネス殿下も無防備なことに、学園にいる間は特別護衛などはついていなかったはず。
 全く身のない・・・・王太子殿下であることだと思ったものだった。
 それはともかくとして、だからこそこのような会話が出来ている。

「民にも、それは広く伝えていく予定であるのだとか……」

 だから、父がいなくなった後にどうなるのか、どうするのかは、それぞれ皆が判断することとなる。
 今、この国の現状を、理解していないものなどいないのだ。
 それこそ、王妃様とシュネス殿下、そして国に全く関心を向けておられない国王陛下以外には。
 私が、リコスにこのようなことを話したのは、学園生活も、もうじき終わりに近づいているからだった。
 私はシュネス殿下に近づかなかった。
 もちろん、シュネス殿下のお傍にいるニディアにも。
 だけど、はたで見ているだけでわかる。
 多分、それだけで充分なのだろうと。
 私達の悲願はきっと叶う。

「それは……また。何か助力は?」

 色々と飲み込んだリコスが、それだけを確かめてくる。
 私は微笑んだ。
 さて、私の望みが叶うのは、いったいいつのことだろう。
 考える。
 多分、卒業式、だとかそういった場では、ないと思う。
 シュネス殿下のことだから、私に何かを行うのならば、もっと大々的に行いたがるはずだ。
 私は殿下に何もしていないけれど、そのようなこときっとシュネス殿下には関係がないだろうから。

「まだ、確定ではございませんが……」

 考えられる機会は、そう多くはない。

「ああ、彼の殿下の成人祝いのパーティ……」

 卒業後、数ヶ月後に行われる。
 本来ならば、私とシュネス殿下の婚姻式の日時が発表されたりなどされるような場である。
 だが、そのような話は全く何も進んではいなかった・・・・・・・・・
 それだけで、王宮の私への扱いが知れようというもの。
 私も同じ予想で、だから小さく頷く。
 しばらく、何かを考えていたように見えたリコスは、次に改めて私の方へと向いた時には、何かを決意したようだった。
 それはきっと私も同じ。
 シュネス殿下の成人祝いパーティにきっとことが動く。
 それはただの予想で根拠などない。
 だけどその予想は、外れることなどなかったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

農地スローライフ、始めました~婚約破棄された悪役令嬢は、第二王子から溺愛される~

可児 うさこ
恋愛
前世でプレイしていたゲームの悪役令嬢に転生した。公爵に婚約破棄された悪役令嬢は、実家に戻ったら、第二王子と遭遇した。彼は王位継承より農業に夢中で、農地を所有する実家へ見学に来たらしい。悪役令嬢は彼に一目惚れされて、郊外の城で一緒に暮らすことになった。欲しいものを何でも与えてくれて、溺愛してくれる。そんな彼とまったり農業を楽しみながら、快適なスローライフを送ります。

悪役令嬢より取り巻き令嬢の方が問題あると思います

恋愛
両親と死別し、孤児院暮らしの平民だったシャーリーはクリフォード男爵家の養女として引き取られた。丁度その頃市井では男爵家など貴族に引き取られた少女が王子や公爵令息など、高貴な身分の男性と恋に落ちて幸せになる小説が流行っていた。シャーリーは自分もそうなるのではないかとつい夢見てしまう。しかし、夜会でコンプトン侯爵令嬢ベアトリスと出会う。シャーリーはベアトリスにマナーや所作など色々と注意されてしまう。シャーリーは彼女を小説に出て来る悪役令嬢みたいだと思った。しかし、それが違うということにシャーリーはすぐに気付く。ベアトリスはシャーリーが嘲笑の的にならないようマナーや所作を教えてくれていたのだ。 (あれ? ベアトリス様って実はもしかして良い人?) シャーリーはそう思い、ベアトリスと交流を深めることにしてみた。 しかしそんな中、シャーリーはあるベアトリスの取り巻きであるチェスター伯爵令嬢カレンからネチネチと嫌味を言われるようになる。カレンは平民だったシャーリーを気に入らないらしい。更に、他の令嬢への嫌がらせの罪をベアトリスに着せて彼女を社交界から追放しようともしていた。彼女はベアトリスも気に入らないらしい。それに気付いたシャーリーは怒り狂う。 「私に色々良くしてくださったベアトリス様に冤罪をかけようとするなんて許せない!」 シャーリーは仲良くなったテヴァルー子爵令息ヴィンセント、ベアトリスの婚約者であるモールバラ公爵令息アイザック、ベアトリスの弟であるキースと共に、ベアトリスを救う計画を立て始めた。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。 ジャンルは恋愛メインではありませんが、アルファポリスでは当てはまるジャンルが恋愛しかありませんでした。

【完結】ご安心を、問題ありません。

るるらら
恋愛
婚約破棄されてしまった。 はい、何も問題ありません。 ------------ 公爵家の娘さんと王子様の話。 オマケ以降は旦那さんとの話。

婚約破棄されたのたが、兄上がチートでツラい。

藤宮
恋愛
「ローズ。貴様のティルナシア・カーターに対する数々の嫌がらせは既に明白。そのようなことをするものを国母と迎え入れるわけにはいかぬ。よってここにアロー皇国皇子イヴァン・カイ・アローとローザリア公爵家ローズ・ロレーヌ・ローザリアの婚約を破棄する。そして、私、アロー皇国第二皇子イヴァン・カイ・アローは真に王妃に相応しき、このカーター男爵家令嬢、ティルナシア・カーターとの婚約を宣言する」 婚約破棄モノ実験中。名前は使い回しで← うっかり2年ほど放置していた事実に、今驚愕。

【完結】ああ……婚約破棄なんて計画するんじゃなかった

岡崎 剛柔
恋愛
【あらすじ】 「シンシア・バートン。今日この場を借りてお前に告げる。お前との婚約は破棄だ。もちろん異論は認めない。お前はそれほどの重罪を犯したのだから」  シンシア・バートンは、父親が勝手に決めた伯爵令息のアール・ホリックに公衆の面前で婚約破棄される。  そしてシンシアが平然としていると、そこにシンシアの実妹であるソフィアが現れた。  アールはシンシアと婚約破棄した理由として、シンシアが婚約していながら別の男と逢瀬をしていたのが理由だと大広間に集まっていた貴族たちに説明した。  それだけではない。  アールはシンシアが不貞を働いていたことを証明する証人を呼んだり、そんなシンシアに嫌気が差してソフィアと新たに婚約することを宣言するなど好き勝手なことを始めた。  だが、一方の婚約破棄をされたシンシアは動じなかった。  そう、シンシアは驚きも悲しみもせずにまったく平然としていた。  なぜなら、この婚約破棄の騒動の裏には……。

転生令嬢だと打ち明けたら、婚約破棄されました。なので復讐しようと思います。

柚木ゆず
恋愛
 前世の記憶と膨大な魔力を持つサーシャ・ミラノは、ある日婚約者である王太子ハルク・ニースに、全てを打ち明ける。  だが――。サーシャを待っていたのは、婚約破棄を始めとした手酷い裏切り。サーシャが持つ力を恐れたハルクは、サーシャから全てを奪って投獄してしまう。  信用していたのに……。  酷い……。  許せない……!。  サーシャの復讐が、今幕を開ける――。

婚約破棄の特等席はこちらですか?

A
恋愛
公爵令嬢、コーネリア・ディ・ギリアリアは自分が前世で繰り返しプレイしていた乙女ゲーム『五色のペンタグラム』の世界に転生していることに気づく。 将来的には婚約破棄が待っているが、彼女は回避する気が無い。いや、むしろされたい。 何故ならそれは自分が一番好きなシーンであったから。 カップリング厨として推しメン同士をくっつけようと画策する彼女であったが、だんだんとその流れはおかしくなっていき………………

殿下、あなたが求婚した相手はわたくしではありません

仲室日月奈
恋愛
「十六歳の誕生日、おめでとうございます。あのときの約束を覚えていますか? 俺はあのときのことを忘れたことはありません。もう一度、改めてプロポーズさせてください。どうか、俺の妃になっていただけませんか」 突然の求婚に、ヴェルハイム伯爵令嬢のステラはただただ困惑した。 目の前には見目麗しい第三王子が跪いている。 けれど、どれだけ記憶を呼び起こしても、そんな約束をした覚えはない。 これは、勘違いから始まる恋のお話。

処理中です...