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10・予想
しおりを挟む「父は国を見限るとのことです」
そしてそれを民にも広く伝えるという。
私がリコスにそれを伝えたのは学園の裏庭、周りに樹々が生い茂り、程よく音が周囲に漏れない東屋の中でのこと。
そのような軽い結界が張ってある場所だった。
とは言え、全くの防音結界というわけではないのだけれど、私たちにとって警戒全て王妃様もシュネス殿下も、お二方とも警戒心の強い方々ではない。
どれだけご自身のお立場などに絶対の自信を持っておられるのか、むしろそういった意味では無防備な方々とも言えた。
実際、面と向かって彼らには向かわない限り、制裁などを加えられたなどと言う話は聞いたことがないのだから、むしろ浅はかとすら言えることだろう。
王妃様のご実家の侯爵家の方がまだ、少しばかり警戒心が強いかもしれないけれどもそれだけ。
とにかく陰口などに気付かれるような方々ではなかった。
それはこのような話であっても同じだ。
その上で少しばかり大目に結界を張っておけば、それだけで話が漏れる可能性はほとんどなくなってしまう。
我が国の王家にはもともとは、影だとか、そういった諜報を担う者たちが存在していたと王宮での教育で習ったけれど、しかし今はそういった者たち皆、王妃様が使い尽くして、ほとんどいなくなっているのだとも聞かされていた。
だからいろいろと注意するようにとも。
つまり私の護衛などに人員は避けないという話だったのである。
シュネス殿下も無防備なことに、学園にいる間は特別護衛などはついていなかったはず。
全く身のない王太子殿下であることだと思ったものだった。
それはともかくとして、だからこそこのような会話が出来ている。
「民にも、それは広く伝えていく予定であるのだとか……」
だから、父がいなくなった後にどうなるのか、どうするのかは、それぞれ皆が判断することとなる。
今、この国の現状を、理解していないものなどいないのだ。
それこそ、王妃様とシュネス殿下、そして国に全く関心を向けておられない国王陛下以外には。
私が、リコスにこのようなことを話したのは、学園生活も、もうじき終わりに近づいているからだった。
私はシュネス殿下に近づかなかった。
もちろん、シュネス殿下のお傍にいるニディアにも。
だけど、はたで見ているだけでわかる。
多分、それだけで充分なのだろうと。
私達の悲願はきっと叶う。
「それは……また。何か助力は?」
色々と飲み込んだリコスが、それだけを確かめてくる。
私は微笑んだ。
さて、私の望みが叶うのは、いったいいつのことだろう。
考える。
多分、卒業式、だとかそういった場では、ないと思う。
シュネス殿下のことだから、私に何かを行うのならば、もっと大々的に行いたがるはずだ。
私は殿下に何もしていないけれど、そのようなこときっとシュネス殿下には関係がないだろうから。
「まだ、確定ではございませんが……」
考えられる機会は、そう多くはない。
「ああ、彼の殿下の成人祝いのパーティ……」
卒業後、数ヶ月後に行われる。
本来ならば、私とシュネス殿下の婚姻式の日時が発表されたりなどされるような場である。
だが、そのような話は全く何も進んではいなかった。
それだけで、王宮の私への扱いが知れようというもの。
私も同じ予想で、だから小さく頷く。
しばらく、何かを考えていたように見えたリコスは、次に改めて私の方へと向いた時には、何かを決意したようだった。
それはきっと私も同じ。
シュネス殿下の成人祝いパーティにきっとことが動く。
それはただの予想で根拠などない。
だけどその予想は、外れることなどなかったのだった。
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