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2・家族の総意
しおりを挟む我が国の陛下は、とかく我が国自体に一切関心を持たれない方だった。
元々国王になりたくてなった方ではなく、仕方なくその立場を受け入れざるを得なかったのだとは聞いていた。
そのおかげと言えばいいのか、その所為と言えばいいのか、王妃様とご実家の侯爵家は、陛下を差し置いて国主のような顔をして、いつの間にか好き勝手にこの国を動かすようになってしまっていた。
当然彼らは、国民のことを第一に考えるような高尚な思想を持った方たちでは全くない。
私の生まれた侯爵家の役割は、そんな王宮、否、王妃様とご実家の侯爵家と、国民との間を取り持つようなものだった。
王妃様や公爵家の方々を諫め、宥め、可能な限りご希望に添うようにしながら、民に影響がいかないようにできるだけ苦心する。
逆に言えばそれが、高位貴族としての務めであると、少なくとも父は、まるで自分に言い聞かせるかのように幾度となく口にしていた。
そんな中での、不本意な私への婚約の打診と、他でもない第二王子殿下ご本人の態度である。
早晩、国を見限るようになり、それは私の希望とも合致した。
つまり、第二王子殿下との婚約の破棄は、我が家の総意ということだ。
とは言え、そう決まったとして、では一体どうすればそのようなことが出来るのか。
少なくとも我が家からは決して言えない。
第二王子殿下から希望してもらう必要があった。
それでいて余計な罪をかぶったりなども、しないようにしなければならない。
いったいどうすればいいのか、具体案を思いつかないまま年を経て、もういっそ物語などを参考にするのはどうだろうと考え付いたのは、中等部の卒業を控え、高等部への進学も近づいてきた時だった。
奇しくも、第二王子殿下が私を疎んじているのは間違いない。
加えて第二王子殿下は、お世辞にも優秀な方とは言い難かった。
勉強や鍛錬などもサボりがちで、その癖ご自身のお生まれには誇りを持って驕っている。
第二王子殿下の周りには、当然、殿下に賛同する者しかおらず、すでに王家自体に見切りをつけている父も私も何も言わず、しかし何も言わずにいたからこそ、王妃様から敵意を向けられずに過ごすことが出来たと言っていい。
とにかく、多分些細なきっかけがあれば、思う通りに進めることはできるのではないかと思われた。
参考にする物語は、時間がない中、慎重に吟味した。
私から直接殿下にお伝えすることはできないし、そもそもそういった機会も持てない。
取れる手段は人づてのみ。
幸い、殿下の周囲の者たちにまで、私が避けられているというようなことはなかったし、有難くも私自身を慕って下さっている方などもいて、しっかりとした道筋さえ示せれば、誘導することは可能だった。
そうして選んだ物語は一冊の本。否、いくつもある、同じような物語。
いわゆるラブロマンス小説である。
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