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愛の誓い

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カメラで映された映像が目の前のモニターに映し出される。

今私はお爺さんと狭い準備室でこれから始まる結婚式を温かくも冷めた目で見守っていた。

しばらく経ち、会場の照明が一斉に消える。

会場のざわざわがピタッと止まり、皆が各々何かをしている手を止め、後ろを振り返る。

後ろにはレッドカーペットの道が敷かれた大きな扉に2つのスポットライトで照らされていた。

そして、会場の隅の一流楽団による素晴らしい演奏とともに、新郎新婦が入場する。

大扉が開いたそこには、綺麗な衣装を纏い、化粧が施されたマリアと同じく正装のマルクが立っていた。

2人は息を合わせ一歩ずつ歩みを始める。

2人の人生の道が混同したように。

煌びやかな演奏は、2人を何倍にも美しく見せた。

席の先頭には2人の両親とミミックが座っていた。

ミミックが来ていたことに驚くが、それ以上に気になる事があった。

ミミックがいつもと違うのだ。

そりゃ服も違うし化粧もしているのだから違うのは当たり前なのだが、なんか、こう、根本的に違うような気がした。

マリア側の両親に目を向けると、我が物顔でマルクを見つめていた。

その顔に、善の心は持ち合わせていないように見えた。

初めてマリアの母の顔を見たが、とてもいい人そうで綺麗な顔立ちをしていた。

衣装が様になっており、指や首につけたアクセサリーは、まるで操られているかのように、マリアの母に似合っていた。

到底この人が産んだとは思えないような子供2人だ。

マリアにミミック、どちらも内面は狂っている。

それは間違いなく、父親譲りなのだろう。

2人が歩きだして、いよいよ牧師の前まで来た。

そして2人は、愛を誓った。

それは一瞬で、2人の顔は幸せに満ち溢れていた。

それと同時に私のほんの僅かに残っていた心も完全に粉砕された。

そして式は披露宴へと移った。

いよいよこれからだ。

軽い挨拶や乾杯が済んだ後、始まる。

私が用意した隠しプログラム。

それはどのプログラムよりも強烈で心に残る自信が私にはあった。

もちろんそれはお爺さんにもあっただろう。

私とお爺さんはまじまじとモニターを見つめ、その時を待つ。

すると、突然発せられた声が少しのざわめきを持った会場に響いた。

「ミミック!なんでお前がいるんだ!」

それは紛れもなくビリオンの言葉だった。

そしてその声とともに注目は隅でバレないように隠れているサルバドールさんの方に行った。

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