【完結】悪役令嬢に○されそうです。助けてください。

夢病マッキー

文字の大きさ
上 下
53 / 60

一流デザイナー

しおりを挟む
「よし、じゃあわしはモニターの準備をしてくる。......そうだな、お前もついて来な。色々追加したけりゃその都度言ってくれ」

「はい、分かりました」

2人は冷えた風をかき分け、道を進む。アスファルトの床を靴で踏みつけても、音は鳴らない。

「ちょっと待ってください」

城の前まで来て、警備をしている兵士に止められる。

「安心しろ、わしだ」

「すいません、どうぞお通りください。あの、そちらの女性の方は...?」

「ああ、ただの知り合いだ。別に悪さはせんよ。入れさせてくれ」

「は、はい。どうぞお進みください」

兵士の反応からするに、このお爺さんはかなりの重鎮らしい。

その姿からは想像もできないが、周りの反応からか急に魅力を感じ始めた。

「ここだ、入れ」

お爺さんの呼び声とともに扉は開かれた。そこは、準備室だった。

こんなにも純白で綺麗なお城の中にしては小汚く、狭苦しい。

大量の機材や本などで圧迫感を感じる。

「なぜこんなに、狭い部屋で作業をするんですか?」

「まあ、これくらい圧迫感がある方が作業に集中しやすいだろ。そんなことはいいから。枠はこんな感じで大丈夫か?」

「はい、とてもいいと思います」

はやい...。まだこの部屋について数分も経っていないのにもう土台が完成している。

物置に忘れ去られた古い日記の切れ端の様なノスタルジーさが完璧に再現されている。

「ここに打ち込んでいく。さっき言ってた内容をどう分ければいいんだ?」

「え、どう分けるって...」

「日付だよ。1日にこんなに事が起きるわけないだろ」

「あ、そうですよね...。それは、お爺さんの好きな様にしてください...」

「ああ、そうか。じゃあこっちでやっておく」

こんなにも仕事がはやいなんて。正直、頭がついていけなかった。私の構想をあらかた予想し、こちらに質問を投げかけてくる。

そして、改善点をもう見つけ出す。

やはりプロなんだ。この見た目からは想像できないほどに、この人の頭の中は超回転しているのだろう。

「よし、大体できたぞ」

しばらく経ち、日記がほとんど完成した。

「お、本当ですか!?えーっと...」

楽しみに内容を見ると、デザインから文章まで全て完璧な仕事ぶりだった。

私が伝えた内容をしっかりと盛り込み、さらには話術まで使っている。

年季の入ったその文章は情景をありありと表現できていた。

これは予想以上の完成度だ。

「す、すごいですね...!!」

やや興奮気味の私は目を全開まで開き、見せられた画面に夢中だった。

「他に変えたいところがあるなら言ってくれ。なんでもやってやる」

「変えたいところ...」

念入りに見るが、粗など微塵も見当たらなかった。

私が思い描いていた形がそのまま、むしろそれ以上に再現されていた。


これは、いい式になりそうだ...。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

婚約破棄の甘さ〜一晩の過ちを見逃さない王子様〜

岡暁舟
恋愛
それはちょっとした遊びでした

悪役令嬢アンジェリカの最後の悪あがき

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【追放決定の悪役令嬢に転生したので、最後に悪あがきをしてみよう】 乙女ゲームのシナリオライターとして活躍していた私。ハードワークで意識を失い、次に目覚めた場所は自分のシナリオの乙女ゲームの世界の中。しかも悪役令嬢アンジェリカ・デーゼナーとして断罪されている真っ最中だった。そして下された罰は爵位を取られ、へき地への追放。けれど、ここは私の書き上げたシナリオのゲーム世界。なので作者として、最後の悪あがきをしてみることにした――。 ※他サイトでも投稿中

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

義理姉がかわいそうと言われましても、私には関係の無い事です

渡辺 佐倉
恋愛
マーガレットは政略で伯爵家に嫁いだ。 愛の無い結婚であったがお互いに尊重し合って結婚生活をおくっていければいいと思っていたが、伯爵である夫はことあるごとに、離婚して実家である伯爵家に帰ってきているマーガレットにとっての義姉達を優先ばかりする。 そんな生活に耐えかねたマーガレットは… 結末は見方によって色々系だと思います。 なろうにも同じものを掲載しています。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

悪役令嬢がキレる時

リオール
恋愛
この世に悪がはびこるとき ざまぁしてみせましょ 悪役令嬢の名にかけて! ======== ※主人公(ヒロイン)は口が悪いです。 あらかじめご承知おき下さい 突発で書きました。 4話完結です。

悪役令嬢を追い込んだ王太子殿下こそが黒幕だったと知った私は、ざまぁすることにいたしました!

奏音 美都
恋愛
私、フローラは、王太子殿下からご婚約のお申し込みをいただきました。憧れていた王太子殿下からの求愛はとても嬉しかったのですが、気がかりは婚約者であるダリア様のことでした。そこで私は、ダリア様と婚約破棄してからでしたら、ご婚約をお受けいたしますと王太子殿下にお答えしたのでした。 その1ヶ月後、ダリア様とお父上のクノーリ宰相殿が法廷で糾弾され、断罪されることなど知らずに……

悪役令嬢とバレて、仕方ないから本性をむき出す

岡暁舟
恋愛
第一王子に嫁ぐことが決まってから、一年間必死に修行したのだが、どうやら王子は全てを見破っていたようだ。婚約はしないと言われてしまった公爵令嬢ビッキーは、本性をむき出しにし始めた……。

処理中です...