【完結】悪役令嬢に○されそうです。助けてください。

夢病マッキー

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水色の空の下で

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2人は早朝で人の気配がなく、いささかの活気もない城下町をぶらり歩き回っていた。

「ここは、私がよくマルクと一緒にお話をしたところなんですよ!」

だだっ広い公園の隅の方に設置された、庭園のベンチをさして言う。

そこは水や色とりどりの花々に囲まれ、画角に収めればとても神秘的で美しい。

鮮やかな緑色の神秘的な庭園を彩る池泉には、一切の泡沫も無く鮮明に私たちを映し出していた。

「へぇ~。いいですね。夜になると、茂みに隠れたライトでより一層ムードが生まれそうで、一度お目にかかりたいです」

サルバドールは視線をキョロキョロさせながら言う。

「なつかしいなぁ。マルクとよく、どうでも良い話から深刻な話までいろんな話をここで話してきたんです。

でも、恋の話は一度もなかったなぁ」

物欲しげに私は呟く。

サルバドールは気にしないふりをしながらも、興味を示す。

「マルク様と、恋のお話はされないのですか?」

サルバドールは覚悟を決めたかのように口を動かし、問いかける。

「ええ、だってマルクが好きだったから。好きな人の前で話す恋の話なんてあるわけないでしょ」

私は少し照れつつ、無邪気に発する。

「私もよく、人を好きになることはありましたけど、確かに自分からは言い出せませんでしたね。ほんと意気地なしですよ」

サルバドールは自分を蔑みつつ過去を振り返る。

そんな姿を見て、私はサルバドールの過去が気になった。

「好きになるって片思いのまま何もせずですか?」

私は自分のことを棚にあげながら聞く。

「ええ、今思えば言っちゃっても良かったのかもしれませんね。今はもう言うことはできないですから」

サルバドールは少し後悔の念を抱きながら言う。

「その人のことは今も好きなんですか?」

姿勢を正し、恐る恐る私は聞く。心の中で静かに否定の返事を願った。

「うーん。好きじゃないと言えば嘘になるけど、難しいなぁ。」

若干肯定寄りだが、曖昧な返事だった。

でも、私は嬉しかった。だんだんサルバドールさんと距離が縮待っているような気がして。

「そうなんですね...。私も実は、今好きな人がいるんですよ」

そっと私は呟く。

「そうなんですか?マルク様が結婚されてまた気が変わったのですね」

そう言ったサルバドールの顔はとても爽やかだった。

何も気にしていない様子で。

私は少し心を抉られる。

これか、片思いってやつは...。

私は今までのマルクの対応を思い返す。それと今のサルバドールの顔はどこと無く似ていた。

興味のない異性に向ける顔の筋肉は誰でも同じなのだろうか。

私は勝手に悲しくなる。

しかし、やっぱり思い切らないといけない。

ここに来ると決めた時、その気持ちは少なからずあったはずだ。

それが今、密かに爆発した。

今、およそ午前6時。日が昇り始め心地よい日差しが私たちを照らす。

雲が白く見え始めた空はまるで全方向から2人を見つめているようだった。

水色の空の下で、私はムードのない告白をした。
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