46 / 60
水色の空の下で
しおりを挟む
2人は早朝で人の気配がなく、いささかの活気もない城下町をぶらり歩き回っていた。
「ここは、私がよくマルクと一緒にお話をしたところなんですよ!」
だだっ広い公園の隅の方に設置された、庭園のベンチをさして言う。
そこは水や色とりどりの花々に囲まれ、画角に収めればとても神秘的で美しい。
鮮やかな緑色の神秘的な庭園を彩る池泉には、一切の泡沫も無く鮮明に私たちを映し出していた。
「へぇ~。いいですね。夜になると、茂みに隠れたライトでより一層ムードが生まれそうで、一度お目にかかりたいです」
サルバドールは視線をキョロキョロさせながら言う。
「なつかしいなぁ。マルクとよく、どうでも良い話から深刻な話までいろんな話をここで話してきたんです。
でも、恋の話は一度もなかったなぁ」
物欲しげに私は呟く。
サルバドールは気にしないふりをしながらも、興味を示す。
「マルク様と、恋のお話はされないのですか?」
サルバドールは覚悟を決めたかのように口を動かし、問いかける。
「ええ、だってマルクが好きだったから。好きな人の前で話す恋の話なんてあるわけないでしょ」
私は少し照れつつ、無邪気に発する。
「私もよく、人を好きになることはありましたけど、確かに自分からは言い出せませんでしたね。ほんと意気地なしですよ」
サルバドールは自分を蔑みつつ過去を振り返る。
そんな姿を見て、私はサルバドールの過去が気になった。
「好きになるって片思いのまま何もせずですか?」
私は自分のことを棚にあげながら聞く。
「ええ、今思えば言っちゃっても良かったのかもしれませんね。今はもう言うことはできないですから」
サルバドールは少し後悔の念を抱きながら言う。
「その人のことは今も好きなんですか?」
姿勢を正し、恐る恐る私は聞く。心の中で静かに否定の返事を願った。
「うーん。好きじゃないと言えば嘘になるけど、難しいなぁ。」
若干肯定寄りだが、曖昧な返事だった。
でも、私は嬉しかった。だんだんサルバドールさんと距離が縮待っているような気がして。
「そうなんですね...。私も実は、今好きな人がいるんですよ」
そっと私は呟く。
「そうなんですか?マルク様が結婚されてまた気が変わったのですね」
そう言ったサルバドールの顔はとても爽やかだった。
何も気にしていない様子で。
私は少し心を抉られる。
これか、片思いってやつは...。
私は今までのマルクの対応を思い返す。それと今のサルバドールの顔はどこと無く似ていた。
興味のない異性に向ける顔の筋肉は誰でも同じなのだろうか。
私は勝手に悲しくなる。
しかし、やっぱり思い切らないといけない。
ここに来ると決めた時、その気持ちは少なからずあったはずだ。
それが今、密かに爆発した。
今、およそ午前6時。日が昇り始め心地よい日差しが私たちを照らす。
雲が白く見え始めた空はまるで全方向から2人を見つめているようだった。
水色の空の下で、私はムードのない告白をした。
「ここは、私がよくマルクと一緒にお話をしたところなんですよ!」
だだっ広い公園の隅の方に設置された、庭園のベンチをさして言う。
そこは水や色とりどりの花々に囲まれ、画角に収めればとても神秘的で美しい。
鮮やかな緑色の神秘的な庭園を彩る池泉には、一切の泡沫も無く鮮明に私たちを映し出していた。
「へぇ~。いいですね。夜になると、茂みに隠れたライトでより一層ムードが生まれそうで、一度お目にかかりたいです」
サルバドールは視線をキョロキョロさせながら言う。
「なつかしいなぁ。マルクとよく、どうでも良い話から深刻な話までいろんな話をここで話してきたんです。
でも、恋の話は一度もなかったなぁ」
物欲しげに私は呟く。
サルバドールは気にしないふりをしながらも、興味を示す。
「マルク様と、恋のお話はされないのですか?」
サルバドールは覚悟を決めたかのように口を動かし、問いかける。
「ええ、だってマルクが好きだったから。好きな人の前で話す恋の話なんてあるわけないでしょ」
私は少し照れつつ、無邪気に発する。
「私もよく、人を好きになることはありましたけど、確かに自分からは言い出せませんでしたね。ほんと意気地なしですよ」
サルバドールは自分を蔑みつつ過去を振り返る。
そんな姿を見て、私はサルバドールの過去が気になった。
「好きになるって片思いのまま何もせずですか?」
私は自分のことを棚にあげながら聞く。
「ええ、今思えば言っちゃっても良かったのかもしれませんね。今はもう言うことはできないですから」
サルバドールは少し後悔の念を抱きながら言う。
「その人のことは今も好きなんですか?」
姿勢を正し、恐る恐る私は聞く。心の中で静かに否定の返事を願った。
「うーん。好きじゃないと言えば嘘になるけど、難しいなぁ。」
若干肯定寄りだが、曖昧な返事だった。
でも、私は嬉しかった。だんだんサルバドールさんと距離が縮待っているような気がして。
「そうなんですね...。私も実は、今好きな人がいるんですよ」
そっと私は呟く。
「そうなんですか?マルク様が結婚されてまた気が変わったのですね」
そう言ったサルバドールの顔はとても爽やかだった。
何も気にしていない様子で。
私は少し心を抉られる。
これか、片思いってやつは...。
私は今までのマルクの対応を思い返す。それと今のサルバドールの顔はどこと無く似ていた。
興味のない異性に向ける顔の筋肉は誰でも同じなのだろうか。
私は勝手に悲しくなる。
しかし、やっぱり思い切らないといけない。
ここに来ると決めた時、その気持ちは少なからずあったはずだ。
それが今、密かに爆発した。
今、およそ午前6時。日が昇り始め心地よい日差しが私たちを照らす。
雲が白く見え始めた空はまるで全方向から2人を見つめているようだった。
水色の空の下で、私はムードのない告白をした。
0
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説

【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。

【完結】悪役令嬢の反撃の日々
くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

何もできない王妃と言うのなら、出て行くことにします
天宮有
恋愛
国王ドスラは、王妃の私エルノアの魔法により国が守られていると信じていなかった。
側妃の発言を聞き「何もできない王妃」と言い出すようになり、私は城の人達から蔑まれてしまう。
それなら国から出て行くことにして――その後ドスラは、後悔するようになっていた。

はずれのわたしで、ごめんなさい。
ふまさ
恋愛
姉のベティは、学園でも有名になるほど綺麗で聡明な当たりのマイヤー伯爵令嬢。妹のアリシアは、ガリで陰気なはずれのマイヤー伯爵令嬢。そう学園のみなが陰であだ名していることは、アリシアも承知していた。傷付きはするが、もう慣れた。いちいち泣いてもいられない。
婚約者のマイクも、アリシアのことを幽霊のようだの暗いだのと陰口をたたいている。マイクは伯爵家の令息だが、家は没落の危機だと聞く。嫁の貰い手がないと家の名に傷がつくという理由で、アリシアの父親は持参金を多めに出すという条件でマイクとの婚約を成立させた。いわば政略結婚だ。
こんなわたしと結婚なんて、気の毒に。と、逆にマイクに同情するアリシア。
そんな諦めにも似たアリシアの日常を壊し、救ってくれたのは──。

婚約破棄されなかった者たち
ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。
令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。
第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。
公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。
一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。
その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。
ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。

初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる
kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。
いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。
実はこれは二回目人生だ。
回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。
彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。
そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。
その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯
そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。
※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。
※ 設定ゆるゆるです。

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる