38 / 60
仮説の真偽は?
しおりを挟む
なぜ?どうして?
私の頭の中で次々に疑問が生まれてくる。
そしてその疑問たちを解消できないまま、疑問はどんどん山積みになっていく。
なぜマルクはマリアに電話をかけているのだろう?
しかし、よくよく考えてみればそれはおかしな行動ではなかった。
あのパーティーが停電の後どうなったのかは全く知らない。
だが、その日のマリアの様子から彼女はマルクのことが好きであるということはなんとなくわかっていた。
ということは、停電中なんらかの方法で私を地下の牢獄に放り込み、その後マルクとコンタクトを取り2人の仲は良くなっていった。
信じたくはないが、十分にあり得る仮説だろう。
寧ろそれ以上に酷い現実だったとしたら私は耐えられないかもしれない。
その酷い現実をなんとか考えつかないように目を背ける。
私が頭の中でパニックになっている時もずっと電話の向こうのマルクは電話を取ったのがマリアだと思い、名前を呼び続けている。
私はそっと電話を元の位置に戻した。
それと同時にマルクの声も途切れる。
私はとにかくショックで、危険な状態だということも気にせずに、駆け足で牢獄に戻った。
息は乱れ、目は血走っていたと思う。足音も館中に響き渡っていただろう。
幸い、途中で誰かと会うことはなかった。
私は息を切らしながら牢獄の部屋までの地下の廊下を早歩きで歩く。
衰退しきった体で重い鉄の扉を開ける。
その先には倒れた状態のサルバドールと暇そうにその場をうろつくミミックがいた。
「おかえりなさい。アノンちゃん。」
ミミックが楽しそうに話しかける。
「........」
私は正直、気が気ではない状態で何か言葉を発するのすら苦痛だった。
「どうしたの?アノンちゃん。何か思い詰めていそうですけど。」
ミミックが訝しげに聞いてくる。
私はその言葉を無視して、適当に取ったマルクの写真を渡した。
「お、おう。ありがとう。うん、確かにマルクの写真ですね。いいでしょう。サルバドールは解放してあげましょう。」
そう言ったミミックの顔は笑顔ではあったが、なんだかいつもとは違い、若干の暗さが目に見えた。
「あ、うん。ありがとう。」
なぜかわからないが暗い顔をしていることに対して少し申し訳なく感じ、固い口を開く。
「それより、どうしたんですか?そんなに暗い顔をして。」
私はあのことを話すべきかどうか分からなかったが、今は誰かに話して楽になりたいという気持ちが強く、今の心境を打ち明ける。
「実は...あの部屋で電話がかかってきて。」
「マリアの部屋で?それがどうしたんですか?」
まだミミックは不思議そうにこちらを見つめる。
「私はそれを取ったんです。」
「取ったの?大丈夫なんですか?」
「うん。こっちからは何も話していないから私だということはバレないと思う。」
つらつらと深刻そうにさっきの出来事を話す私はきっと顔色が優れていなかっただろう。
「それでねその電話をかけてきた相手が、マルクだったの。」
「ああ、そうなんですか。」
特に気にかけた様子もなくミミックは相槌を打つ。
「え?驚かないの?」
まさかの反応に少し元気になる。
「まぁね。二人の関係を考えたら普通だと思いますよ。」
私の頭の中で次々に疑問が生まれてくる。
そしてその疑問たちを解消できないまま、疑問はどんどん山積みになっていく。
なぜマルクはマリアに電話をかけているのだろう?
しかし、よくよく考えてみればそれはおかしな行動ではなかった。
あのパーティーが停電の後どうなったのかは全く知らない。
だが、その日のマリアの様子から彼女はマルクのことが好きであるということはなんとなくわかっていた。
ということは、停電中なんらかの方法で私を地下の牢獄に放り込み、その後マルクとコンタクトを取り2人の仲は良くなっていった。
信じたくはないが、十分にあり得る仮説だろう。
寧ろそれ以上に酷い現実だったとしたら私は耐えられないかもしれない。
その酷い現実をなんとか考えつかないように目を背ける。
私が頭の中でパニックになっている時もずっと電話の向こうのマルクは電話を取ったのがマリアだと思い、名前を呼び続けている。
私はそっと電話を元の位置に戻した。
それと同時にマルクの声も途切れる。
私はとにかくショックで、危険な状態だということも気にせずに、駆け足で牢獄に戻った。
息は乱れ、目は血走っていたと思う。足音も館中に響き渡っていただろう。
幸い、途中で誰かと会うことはなかった。
私は息を切らしながら牢獄の部屋までの地下の廊下を早歩きで歩く。
衰退しきった体で重い鉄の扉を開ける。
その先には倒れた状態のサルバドールと暇そうにその場をうろつくミミックがいた。
「おかえりなさい。アノンちゃん。」
ミミックが楽しそうに話しかける。
「........」
私は正直、気が気ではない状態で何か言葉を発するのすら苦痛だった。
「どうしたの?アノンちゃん。何か思い詰めていそうですけど。」
ミミックが訝しげに聞いてくる。
私はその言葉を無視して、適当に取ったマルクの写真を渡した。
「お、おう。ありがとう。うん、確かにマルクの写真ですね。いいでしょう。サルバドールは解放してあげましょう。」
そう言ったミミックの顔は笑顔ではあったが、なんだかいつもとは違い、若干の暗さが目に見えた。
「あ、うん。ありがとう。」
なぜかわからないが暗い顔をしていることに対して少し申し訳なく感じ、固い口を開く。
「それより、どうしたんですか?そんなに暗い顔をして。」
私はあのことを話すべきかどうか分からなかったが、今は誰かに話して楽になりたいという気持ちが強く、今の心境を打ち明ける。
「実は...あの部屋で電話がかかってきて。」
「マリアの部屋で?それがどうしたんですか?」
まだミミックは不思議そうにこちらを見つめる。
「私はそれを取ったんです。」
「取ったの?大丈夫なんですか?」
「うん。こっちからは何も話していないから私だということはバレないと思う。」
つらつらと深刻そうにさっきの出来事を話す私はきっと顔色が優れていなかっただろう。
「それでねその電話をかけてきた相手が、マルクだったの。」
「ああ、そうなんですか。」
特に気にかけた様子もなくミミックは相槌を打つ。
「え?驚かないの?」
まさかの反応に少し元気になる。
「まぁね。二人の関係を考えたら普通だと思いますよ。」
0
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
愛しの婚約者は王女様に付きっきりですので、私は私で好きにさせてもらいます。
梅雨の人
恋愛
私にはイザックという愛しの婚約者様がいる。
ある日イザックは、隣国の王女が私たちの学園へ通う間のお世話係を任されることになった。
え?イザックの婚約者って私でした。よね…?
二人の仲睦まじい様子を見聞きするたびに、私の心は折れてしまいました。
ええ、バッキバキに。
もういいですよね。あとは好きにさせていただきます。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
貴方の愛人を屋敷に連れて来られても困ります。それより大事なお話がありますわ。
もふっとしたクリームパン
恋愛
「早速だけど、カレンに子供が出来たんだ」
隣に居る座ったままの栗色の髪と青い眼の女性を示し、ジャンは笑顔で勝手に話しだす。
「離れには子供部屋がないから、こっちの屋敷に移りたいんだ。部屋はたくさん空いてるんだろ? どうせだから、僕もカレンもこれからこの屋敷で暮らすよ」
三年間通った学園を無事に卒業して、辺境に帰ってきたディアナ・モンド。モンド辺境伯の娘である彼女の元に辺境伯の敷地内にある離れに住んでいたジャン・ボクスがやって来る。
ドレスは淑女の鎧、扇子は盾、言葉を剣にして。正々堂々と迎え入れて差し上げましょう。
妊娠した愛人を連れて私に会いに来た、無法者をね。
本編九話+オマケで完結します。*2021/06/30一部内容変更あり。カクヨム様でも投稿しています。
随時、誤字修正と読みやすさを求めて試行錯誤してますので行間など変更する場合があります。
拙い作品ですが、どうぞよろしくお願いします。
私が死んだあとの世界で
もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。
初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。
だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。
悪役令嬢に仕立てあげられて婚約破棄の上に処刑までされて破滅しましたが、時間を巻き戻してやり直し、逆転します。
しろいるか
恋愛
王子との許婚で、幸せを約束されていたセシル。だが、没落した貴族の娘で、侍女として引き取ったシェリーの魔の手により悪役令嬢にさせられ、婚約破棄された上に処刑までされてしまう。悲しみと悔しさの中、セシルは自分自身の行いによって救ってきた魂の結晶、天使によって助け出され、時間を巻き戻してもらう。
次々に襲い掛かるシェリーの策略を切り抜け、セシルは自分の幸せを掴んでいく。そして憎しみに囚われたシェリーは……。
破滅させられた不幸な少女のやり直し短編ストーリー。人を呪わば穴二つ。
[完結]婚約破棄してください。そして私にもう関わらないで
みちこ
恋愛
妹ばかり溺愛する両親、妹は思い通りにならないと泣いて私の事を責める
婚約者も妹の味方、そんな私の味方になってくれる人はお兄様と伯父さんと伯母さんとお祖父様とお祖母様
私を愛してくれる人の為にももう自由になります
【完結】側妃は愛されるのをやめました
なか
恋愛
「君ではなく、彼女を正妃とする」
私は、貴方のためにこの国へと貢献してきた自負がある。
なのに……彼は。
「だが僕は、ラテシアを見捨てはしない。これから君には側妃になってもらうよ」
私のため。
そんな建前で……側妃へと下げる宣言をするのだ。
このような侮辱、恥を受けてなお……正妃を求めて抗議するか?
否。
そのような恥を晒す気は無い。
「承知いたしました。セリム陛下……私は側妃を受け入れます」
側妃を受けいれた私は、呼吸を挟まずに言葉を続ける。
今しがた決めた、たった一つの決意を込めて。
「ですが陛下。私はもう貴方を支える気はありません」
これから私は、『捨てられた妃』という汚名でなく、彼を『捨てた妃』となるために。
華々しく、私の人生を謳歌しよう。
全ては、廃妃となるために。
◇◇◇
設定はゆるめです。
読んでくださると嬉しいです!
【完結】この運命を受け入れましょうか
なか
恋愛
「君のようは妃は必要ない。ここで廃妃を宣言する」
自らの夫であるルーク陛下の言葉。
それに対して、ヴィオラ・カトレアは余裕に満ちた微笑みで答える。
「承知しました。受け入れましょう」
ヴィオラにはもう、ルークへの愛など残ってすらいない。
彼女が王妃として支えてきた献身の中で、平民生まれのリアという女性に入れ込んだルーク。
みっともなく、情けない彼に対して恋情など抱く事すら不快だ。
だが聖女の素養を持つリアを、ルークは寵愛する。
そして貴族達も、莫大な益を生み出す聖女を妃に仕立てるため……ヴィオラへと無実の罪を被せた。
あっけなく信じるルークに呆れつつも、ヴィオラに不安はなかった。
これからの顛末も、打開策も全て知っているからだ。
前世の記憶を持ち、ここが物語の世界だと知るヴィオラは……悲運な運命を受け入れて彼らに意趣返す。
ふりかかる不幸を全て覆して、幸せな人生を歩むため。
◇◇◇◇◇
設定は甘め。
不安のない、さっくり読める物語を目指してます。
良ければ読んでくだされば、嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる