25 / 60
事件の真相
しおりを挟む
5分後
ゆっくりと扉が開く。
その遅さには鉄の扉ならではの重さだけでなく、これから始まる話し合いの緊張感やそのことを回避したいという気持ちも乗っかっていた。
扉の外からサルバドールと、地下の警備隊長アロクスが入ってくる。
「ア、アロクス」
数年越しの再会に何を思えばいいのかわからないという様子でポツリとつぶやく男。
「久しぶりだな。」
アロクスはそう言う。ただ、その言葉のそのままの意味としては言っていないだろう。
照れ隠しや罪悪感によって冷酷な言葉選びになってしまったのだろう。
「おい、アロクス。ほんとのことを言ってくれよ。お前は妻を、あの子と子供を殺したのか?!」
男は強く叫ぶ。散々アロクスを悪く思っていた彼はおそらくアロクスからNOの返事が返ってくることを願っているはずだ。
「ああ。」
「!?」
男は驚く。疑っていたのにもかかわらず、まるでその返事が予想外だったように。
「どう言うことだよ!!なぜだ?なんでなんだ!!」
「ちょっと待ってください。地下隊長、それは本当の答えですか?」
サルバドールが慣れた呼び方でアロクスに問いかける。
「ほんと...だよ」
覇気のないアロクスの言葉とともに、アロクスの目からは大粒の涙がたくさんこぼれ落ちている。
「そんなはずはありません。私はみました。庭で狂ったように自らを咎め続けていたあなたを。言ってください。殺したか殺していないかではなく、この事件の真相を。」
「ああ、分かった。
俺は妻と一緒にある村に住んだ。知っての通りその村は一人の金持ちが支配していて、そこに暮らす俺ら平民はずっと虐げられていた。
無論、そんなこと知っていたらそんな村には行きやしない。
そして妻はその金持ちに運悪く目をつけられちまった。俺と結婚していると言う事実を知っているにもかかわらず、妻を性的な目で見続けていた。
もちろん手を出されそうになったり、何か起こりそうになったりした時は、必死で俺が守った。
そしてある日、それはあの反乱が起こる三日前のこと。俺は都会へ一時移動させられ、都会で働かされることになった。
俺だけがだ。
もちろん俺は断った。妻と子を一人になんかさせられない。しかし、断れば妻を殺すと、脅され仕方なくそれを受け入れた。しかし、何かあってはと思い、村の仲間たちに妻と子を頼んだ。何かあったら守ってくれと。
もしかしたらそれがあいつらを焚き付けてしまったのかもしれない。
俺が都会へ移動して三日後、村人の大反乱が起こった。」
ゆっくりと扉が開く。
その遅さには鉄の扉ならではの重さだけでなく、これから始まる話し合いの緊張感やそのことを回避したいという気持ちも乗っかっていた。
扉の外からサルバドールと、地下の警備隊長アロクスが入ってくる。
「ア、アロクス」
数年越しの再会に何を思えばいいのかわからないという様子でポツリとつぶやく男。
「久しぶりだな。」
アロクスはそう言う。ただ、その言葉のそのままの意味としては言っていないだろう。
照れ隠しや罪悪感によって冷酷な言葉選びになってしまったのだろう。
「おい、アロクス。ほんとのことを言ってくれよ。お前は妻を、あの子と子供を殺したのか?!」
男は強く叫ぶ。散々アロクスを悪く思っていた彼はおそらくアロクスからNOの返事が返ってくることを願っているはずだ。
「ああ。」
「!?」
男は驚く。疑っていたのにもかかわらず、まるでその返事が予想外だったように。
「どう言うことだよ!!なぜだ?なんでなんだ!!」
「ちょっと待ってください。地下隊長、それは本当の答えですか?」
サルバドールが慣れた呼び方でアロクスに問いかける。
「ほんと...だよ」
覇気のないアロクスの言葉とともに、アロクスの目からは大粒の涙がたくさんこぼれ落ちている。
「そんなはずはありません。私はみました。庭で狂ったように自らを咎め続けていたあなたを。言ってください。殺したか殺していないかではなく、この事件の真相を。」
「ああ、分かった。
俺は妻と一緒にある村に住んだ。知っての通りその村は一人の金持ちが支配していて、そこに暮らす俺ら平民はずっと虐げられていた。
無論、そんなこと知っていたらそんな村には行きやしない。
そして妻はその金持ちに運悪く目をつけられちまった。俺と結婚していると言う事実を知っているにもかかわらず、妻を性的な目で見続けていた。
もちろん手を出されそうになったり、何か起こりそうになったりした時は、必死で俺が守った。
そしてある日、それはあの反乱が起こる三日前のこと。俺は都会へ一時移動させられ、都会で働かされることになった。
俺だけがだ。
もちろん俺は断った。妻と子を一人になんかさせられない。しかし、断れば妻を殺すと、脅され仕方なくそれを受け入れた。しかし、何かあってはと思い、村の仲間たちに妻と子を頼んだ。何かあったら守ってくれと。
もしかしたらそれがあいつらを焚き付けてしまったのかもしれない。
俺が都会へ移動して三日後、村人の大反乱が起こった。」
0
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説

【完結】貴方の後悔など、聞きたくありません。
なか
恋愛
学園に特待生として入学したリディアであったが、平民である彼女は貴族家の者には目障りだった。
追い出すようなイジメを受けていた彼女を救ってくれたのはグレアルフという伯爵家の青年。
優しく、明るいグレアルフは屈託のない笑顔でリディアと接する。
誰にも明かさずに会う内に恋仲となった二人であったが、
リディアは知ってしまう、グレアルフの本性を……。
全てを知り、死を考えた彼女であったが、
とある出会いにより自分の価値を知った時、再び立ち上がる事を選択する。
後悔の言葉など全て無視する決意と共に、生きていく。
離婚した彼女は死ぬことにした
まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。
-----------------
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
-----------------
とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。
まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。
書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。
作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。

一番悪いのは誰
jun
恋愛
結婚式翌日から屋敷に帰れなかったファビオ。
ようやく帰れたのは三か月後。
愛する妻のローラにやっと会えると早る気持ちを抑えて家路を急いだ。
出迎えないローラを探そうとすると、執事が言った、
「ローラ様は先日亡くなられました」と。
何故ローラは死んだのは、帰れなかったファビオのせいなのか、それとも・・・
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
悪役令嬢アンジェリカの最後の悪あがき
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【追放決定の悪役令嬢に転生したので、最後に悪あがきをしてみよう】
乙女ゲームのシナリオライターとして活躍していた私。ハードワークで意識を失い、次に目覚めた場所は自分のシナリオの乙女ゲームの世界の中。しかも悪役令嬢アンジェリカ・デーゼナーとして断罪されている真っ最中だった。そして下された罰は爵位を取られ、へき地への追放。けれど、ここは私の書き上げたシナリオのゲーム世界。なので作者として、最後の悪あがきをしてみることにした――。
※他サイトでも投稿中
悪役令嬢がキレる時
リオール
恋愛
この世に悪がはびこるとき
ざまぁしてみせましょ
悪役令嬢の名にかけて!
========
※主人公(ヒロイン)は口が悪いです。
あらかじめご承知おき下さい
突発で書きました。
4話完結です。

愛せないですか。それなら別れましょう
黒木 楓
恋愛
「俺はお前を愛せないが、王妃にはしてやろう」
婚約者バラド王子の発言に、 侯爵令嬢フロンは唖然としてしまう。
バラド王子は、フロンよりも平民のラミカを愛している。
そしてフロンはこれから王妃となり、側妃となるラミカに従わなければならない。
王子の命令を聞き、フロンは我慢の限界がきた。
「愛せないですか。それなら別れましょう」
この時バラド王子は、ラミカの本性を知らなかった。

〖完結〗愛人が離婚しろと乗り込んで来たのですが、私達はもう離婚していますよ?
藍川みいな
恋愛
「ライナス様と離婚して、とっととこの邸から出て行ってよっ!」
愛人が乗り込んで来たのは、これで何人目でしょう?
私はもう離婚していますし、この邸はお父様のものですから、決してライナス様のものにはなりません。
離婚の理由は、ライナス様が私を一度も抱くことがなかったからなのですが、不能だと思っていたライナス様は愛人を何人も作っていました。
そして親友だと思っていたマリーまで、ライナス様の愛人でした。
愛人を何人も作っていたくせに、やり直したいとか……頭がおかしいのですか?
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全8話で完結になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる