上 下
20 / 60

警備隊長の過去

しおりを挟む
「過去?いえ、全く。」

「そうですか。では、ここであったのも何かの縁ということで、特別に教えてあげましょう。アロクスの過去、そして私がなぜ、彼を追いかけているのか。」

ゴクリ

「お願いします。」

私は唾を飲み込み男性の話に耳を傾ける。

「まず、私と彼は同級生だった。仲もかなり良く、毎日一緒に遊び歩くほどだった。そしてある日、私はとある女の子が好きだと彼に打ち明けた。

すると彼は、キョトンとした顔をし、非常に驚いている様子だった。話を聞くと、これだけ仲が良ければ好きな人も似るのか、彼もまたその子が好きだったのです。」

「同じ女の子を好きになってたんですね。青春ですね。」

「ええ、そして私たちは決めました。一緒にラブレターを渡そうと。彼はすんなりそれを受け入れました。親友同士、やはり自分だけで告白するのは卑怯だと感じていたのかもしれません。私たちはその日に、その子のロッカーの中にラブレターを一つずつ入れました。」

「それで、どうなったの...ですか?」

「次の日、アロクスがその子に呼ばれました。そして2人は付き合い、後に結婚まで至りました。あとでこっそりロッカーを確認すると、私のラブレターは読んですらいませんでした。」

「ええ、そんな酷い...。」

「その子は元々アロクスのことが好きだったのかもしれないですね。その時の私の悔しさは、半端じゃないものでした。」

「それが理由でアロクスさんを?」

「いいえ、そんなことはありません。私も男です。その女の子はアロクスに任せて私は前を向いて、また歩み始めました。」

「じゃあ、どうして。」

「話しましょう。それから私と彼は少しの気まずさを感じながらも変わらずにいつも通り過ごしていました。

そして、学校も卒業し、離れ離れになっていきました。そんなある日、同窓会がありました。私はもちろん出席し、みんなの垢抜けた姿を見ながら楽しんでいました。

しかし、その場にアロクスとその女の子はいませんでした。」

「そんなに仲が良かったのに。」

「そんな事実を目の当たりにし、みんなは2人のことを話し始めました。話によれば2人は子供も産んでいるらしい。そして話していく中であることを知ってしまったのです。」

「なんですか?」

「アロクスは妻と子を殺した、と。」



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】公爵令嬢はただ静かにお茶が飲みたい

珊瑚
恋愛
穏やかな午後の中庭。 美味しいお茶とお菓子を堪能しながら他の令嬢や夫人たちと談笑していたシルヴィア。 そこに乱入してきたのはーー

大好きだったあなたはもう、嫌悪と恐怖の対象でしかありません。

ふまさ
恋愛
「──お前のこと、本当はずっと嫌いだったよ」 「……ジャスパー?」 「いっつもいっつも。金魚の糞みたいにおれの後をついてきてさ。鬱陶しいったらなかった。お前が公爵令嬢じゃなかったら、おれが嫡男だったら、絶対に相手になんかしなかった」  マリーの目が絶望に見開かれる。ジャスパーとは小さな頃からの付き合いだったが、いつだってジャスパーは優しかった。なのに。 「楽な暮らしができるから、仕方なく優しくしてやってただけなのに。余計なことしやがって。おれの不貞行為をお前が親に言い付けでもしたら、どうなるか。ったく」  続けて吐かれた科白に、マリーは愕然とした。 「こうなった以上、殺すしかないじゃないか。面倒かけさせやがって」  

なんだろう、婚約破棄の件、対等な報復を受けてもらってもいいですか?

みかみかん
恋愛
父に呼び出されて行くと、妹と婚約者。互いの両親がいた。そして、告げられる。婚約破棄。

殿下には既に奥様がいらっしゃる様なので私は消える事にします

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のアナスタシアは、毒を盛られて3年間眠り続けていた。そして3年後目を覚ますと、婚約者で王太子のルイスは親友のマルモットと結婚していた。さらに自分を毒殺した犯人は、家族以上に信頼していた、専属メイドのリーナだと聞かされる。 真実を知ったアナスタシアは、深いショックを受ける。追い打ちをかける様に、家族からは役立たずと罵られ、ルイスからは側室として迎える準備をしていると告げられた。 そして輿入れ前日、マルモットから恐ろしい真実を聞かされたアナスタシアは、生きる希望を失い、着の身着のまま屋敷から逃げ出したのだが… 7万文字くらいのお話です。 よろしくお願いいたしますm(__)m

夫を愛することはやめました。

杉本凪咲
恋愛
私はただ夫に好かれたかった。毎日多くの時間をかけて丹念に化粧を施し、豊富な教養も身につけた。しかし夫は私を愛することはなく、別の女性へと愛を向けた。夫と彼女の不倫現場を目撃した時、私は強いショックを受けて、自分が隣国の王女であった時の記憶が蘇る。それを知った夫は手のひらを返したように愛を囁くが、もう既に彼への愛は尽きていた。

【完結】要らないと言っていたのに今更好きだったなんて言うんですか?

星野真弓
恋愛
 十五歳で第一王子のフロイデンと婚約した公爵令嬢のイルメラは、彼のためなら何でもするつもりで生活して来た。  だが三年が経った今では冷たい態度ばかり取るフロイデンに対する恋心はほとんど冷めてしまっていた。  そんなある日、フロイデンが「イルメラなんて要らない」と男友達と話しているところを目撃してしまい、彼女の中に残っていた恋心は消え失せ、とっとと別れることに決める。  しかし、どういうわけかフロイデンは慌てた様子で引き留め始めて――

【完結】子供が出来たから出て行けと言われましたが出ていくのは貴方の方です。

珊瑚
恋愛
夫であるクリス・バートリー伯爵から突如、浮気相手に子供が出来たから離婚すると言われたシェイラ。一週間の猶予の後に追い出されることになったのだが……

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

処理中です...